【百科詩典】あべしゅしょうとてんのうへいか【安倍首相と天皇陛下】

(安倍晋三は)岸信介という生々しい死者を肩に担いでいる。(中略)
今の日本の政治家の中で「死者に負託された仕事をしている」ことに自覚的なのは安倍晋三くらいである。(中略)
生きている側近たちだけでなく、死者に対してさえ、彼は「ネポティスト(身内重用主義者)」なのである。
これに対して「すべての死者を背負う」という霊的スタンスを取っているのが天皇陛下である。
首相はその点については自分が絶対に「天皇に勝てない」ということを知っている。
だから、天皇の政治的影響力を無化することにこれほど懸命なのである。
現代日本の政治の本質的なバトルは「ある種の死者の負託を背負う首相」と「すべての死者の負託を背負う陛下」の間の「霊的レベル」で展開している。

〜内田樹『街場の天皇論』