【百科詩典】にほんのこじんしゅぎ【日本の個人主義】

市民革命を経て、勝ち取られた個人主義の思想は、人権を普遍的な価値であるとみなしている。その意味では、個人主義は本質的には、あらゆる集団主義、権威主義を排除しようとする。わたしもまた、個人主義者でありたいと思う。しかし、問題がないわけではない。奇矯に響くかもしれないが、日本人が獲得した個人の概念は、金で買ったものであり、金がなければ、その個人とは社会によって淘汰され、そのフルメンバーから除外される危険性もあったのだ。自己利益の追求を絶対視する利己主義や、自分本位主義、自助と自己責任を振りかざす思想が生まれてくる土壌は、この金がらみの個人主義が醸成したものではなかったか。
~平川克美「『消費者』主権国家まで」