【百科詩典】せんそうができるふつうのくに【戦争ができる普通の国】

「戦争ができる国」と「戦争ができない国」のどちらかが戦乱に巻き込まれるリスクが多いかは足し算ができれば小学生でもわかる。
「戦争ができない国」が戦争に巻き込まれるのは「外国からの侵略」の場合だけだが、「戦争ができる国」はそれに「外国への侵略」が戦争機会として加算される。

「戦争ができるふつうの国」と「戦争ができない変わった国」のどちらかに生き残るチャンスが高いか、これも考えればすぐにわかる。
「私がいなくなっても私の代わりはいくらもいる」という場合と、「私がいなくなると『私のようなもの』は世界から消えてしまう」という場合では、圧倒的に後者の方が「生き延びる意欲」は高いからである。
代替不可能性、唯一無二性の自覚以上に人間の「何があっても生き延びようとする意欲」を賦活するインセンティブはない。
だから、国民国家の最優先課題が「国民国家として生き延びること」であるならば、その国は「できるだけ戦争をしない国」であること、「できるだけユニークな国」であることを生存戦略として選択するはずである。

〜内田樹『街場の天皇論』