【百科詩典】パンのたね【パンの種】

その時から、もう気づいていた。
なんとなくではあるが、岩倉くんが私と寝たいと思っていることに。
顔の感じや、声の感じが、なんとなくそう思わせた。
ふたりの間には、寄り添う感じがパンの種みたいに発酵して、しっとりと横たわっていた。

〜よしもとばなな『幽霊の家』