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【香港🇭🇰「修養」日誌36】『キングダム』がすっかり退屈な理由…「自由空間」と「資本主義空間」と「今敏の造夢空間」 @紅磡〜柯士甸〜西九文化區 20220603

端午節の祝日 戦国時代楚国の政治家 屈原は『キングダム』の秦国に狙われていることを王に進言するも奸臣に騙され国外追放 結果楚は都を占領され屈原は失望し 汩羅江に身を投げて自害した

屈原の死を国民たちは嘆き悲しみ 船を漕いで遺体を見つけに出た その際チマキを川へまき 太鼓をたたいたりして 魚が彼の遺体に近づき食べないようにした だから端午節にはチマキを食べドラゴンボートを漕ぐのだとか

やっぱり『キングダム』の秦国は嫌われ気味だよ 「法」の統治力を過信し学問を弾圧し独裁的な群県制が失敗し あっという間に崩壊した秦 『キングダム』を読み進めるほど退屈なのは『平家物語』のような“滅び”の物語としての哀切が欠けているからだと思う 勝利至上の“ジャンプ精神”は捨てないと

大規模な「芸術開発」が行われている西九龍文化区に行っても『キングダム』と同じことを感じる 若い美大生のお洒落な「アート作品」に滅びや哀しみや怒りの物語が感じられない 観光案内のチラシみたいだ 芸術とは開発されるものなのだろうか 曇り空を見上げれば建物の名前は「自由空間」だった

西九龍に聳え立つ超高層108階ビルの環球貿易広場ICCに入る ピカピカの「資本主義空間」 強盗に手首ごと切り落とされそうなギラギラ時計 蛍光色の藻?が燃え上がるヴィトンのセーター 無理矢理アイスリンク 大豪邸への憧れを具現化した『ホームアローン』のレゴ 欲望に歯止めが効いていない分 むしろ退廃的で面白い 滅びの匂いがする

ふと手にした映画館のパンフレット表紙が「今敏:造夢大師」だった 古いメリーゴーランドに流れる愉快な音楽が遠くから聴こえてきそうな あまりに素敵な「作品」 心がほころんだ