スライド6

理念、ビジョン、戦略

用語説明

 経営における最重要項目は、理念ビジョン戦略を考えることである。
 理念とは、その仕事をする目的のことである。何のために仕事をしているのか。その答えは、理念を実現するため、であるべきだ。
 ビジョンとは、理念を実現するにあたっての目標である。どういう道筋を通って理念を実現するのか。その道筋の通過予定地点をビジョンと呼ぶ。
 戦略とは、ビジョンを叶えるための手段である。その手段は1つとは限らず、数限りない手段が存在し、そのうちのいくつかを選択することになる。
 旅行にたとえると、目的地点を決めて交通手段を決めて乗換案内で検索することが、ビジネスでは、理念を掲げてビジョンを決めて戦略を立案することに相当するだろう。
 まずは、理念ビジョン戦略という3つのキーワードを覚えてほしい。


迷子の経営

 多くの事業主が「迷子の経営」をしてしまっていると言われている。
 迷子の3つの条件は、目的地がわからない、行き方がわからない、現在地がわからない、であるが、同様に「迷子の経営」の3つの条件は、仕事の目的がわからない、何を目指すべきかがわからない、今何をしているかがわからない、であると言われる。この状態で経営を続けると、何か作業をしていたとしても堂々巡りで前には進めず、時間ばかりを浪費してしまうことにもなるだろう。
 しかし、今自分が迷子になっていることに気付いていないといけないので、試しに質問をするので答えを考えてみてほしい。

 あなたは何のために仕事をしているのだろうか?

 お金のため、生活のため、やりたいことのため。そのような答えが多いかもしれないが、迷子の経営者は「お金のため」と答えることが多いようである。創業時は、やりたいことを仕事にしたはずなのに、お金を稼いでいるうちに、それが目的になってしまった、という例は非常に多い。手品家社長のとりっと氏も、その道を通ってしまったと気付き、同じ過ちを犯さぬように、と他者には呼び掛けている。
 売り上げは顧客の喜びだ、と考えたときに、売り上げが上がらなかったのは顧客の喜びを疎かにしてしまったせいだと反省し、初心に帰ったと、とりっと氏は言う。

 なぜ、自分はプロマジシャンになったのだろうか。
 その自問の答えが、おそらく仕事をする目的であり、すなわち理念になるだろう。多くのマジシャンは、初心こそが理念であると想像される。

 さて、理念として仮に「お客様を喜ばせたい」という思いがあったとしよう。するとビジョンに落とし込むことができる。ここでは「どれぐらいのお客様をどれぐらいの期間で喜ばせるか?」という問いの答えがビジョンとなるだろう。
 ビジョンの次は戦略であるが、理念とビジョンと戦略は密接に関わっていて、たとえばビジョンとして「地元の人々を喜ばせたい」と考えた場合、「他県や外国に出店する」という戦略とは結び付かない。戦略は、ビジョンありきであるし、ビジョンは理念ありきなのである。

 理念、ビジョンを持たずに働いていた場合、
「なんとなく生活するために、なんとなくマジックをする」
という日々を送ってしまうことになる。
 サラリーマンが時として、
「私は何のために仕事をしているのだろう」
と悩んでしまうのは、理念を持たずに給料を得ているためであるだろうが、せっかくマジシャン業を選んだのに、サラリーマンと同じ悩みを抱くのはもったいないので、迷子の経営にならないよう、理念を掲げて、時間を無駄にすることなくその方向に進んでほしい。

 理念があれば、ビジョンが作れ、それを叶えるための戦略が生まれる。理念は言葉で、ビジョンは数字目標で定めるのがよいだろう。その定め方について、話を進めていくことにする。


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