サトウヒロキ

サトウヒロキ

最近の記事

僕らは星を眺めている

頭の後ろを落として見上げると、言葉は力を失う。 あまりにも壮大で、うそみたいで、近く見えるのに、手の届かない大きな現実。理解と遠いところにある夜空。足元に転がる関係性や、昨日の失敗とか、長年の想いなんかも全部飲み込んでいく。 みんな小さくてハイテクなパソコンを持ち歩けて、理由はわからないけど、電波が飛んでるらしくて、街と街をつなぐ大きな橋があって、花粉症の薬を夕方に頼んだら、次の日の昼には僕の鼻水が止まっている。今日も明日も、後ろから誰かに襲われることを気にせずにご飯が食

    • 春一番

      心地よい風が吹いている。 寒さのかたちが変わって、木々が揺れる。 べちゃ雪の上をスキップしながら、新しい教室に向かう。ワクワクと少しだけの不安と新品のリュック。 そんな感じの気分。2月が終わります。 舞台「川辺市子のために」を終えてから約2週間。本当に参加出来てよかった。改めて足を運んで下さった皆さん、気にかけてくださった皆さん、ありがとうございました。 今舞台に立てることは、決して当たり前のことじゃない。もしかしたら間違っているかもしれない。迷いながらもやり続けるし

      • 国道1号線

        旅をしたい。 知らない街でも、知ってる街でも いや、出来るだけ知らない空気の、 知らない言葉が飛び交う街がいい。 そんなことを思っていた。 「川辺市子のために」 藤原季節くんの企画「春の朗読」に参加して以来、ちょうど4年ぶりに舞台に立つことになった。東大阪で生まれた"市子"という1人の人間のお話。市子のことが知りたい。知らなくてもいいから一緒にいたい。わかるのにわからない。関西弁もわからない。目標もない。だけど、今はちょっと清々しい気持ちだ。 今年は壁にぶつかりすぎた

        • 空だって飛べる

          燃えるコンクリート。 ソールの剥がれかけた靴。 ほつれた服に、砂まみれの服。 1994年8月7日、北海道札幌市では歴代最高気温36.2℃を記録したらしい。そんな日に生まれた。 誕生日。額から大量の汗。 29歳。 池の見える公園の休憩所に座る。 人が乗ったアヒルが泳いでいる。 連絡で誕生日に気づきお寿司を買って、1人でお祝いをしている。 空を見上げると、果てのない青。 新しい、壮大な夢の空。 僕には何が出来るんだろう。 どこへだって行ける。 どこまでも行ける。 そうやって

        僕らは星を眺めている

          やさしくしてくれた人のことをちゃんと思い出せるだろうか

          もしこの人生がずっと先に続くのであれば、今はとっても大きな"点"になると思う。 人間関係、やりたいこと、生活。 一昨年に参加したyoutube生配信ドラマ「マチアイ」の一節が頭を巡る。2020年に参加した「春の朗読」の台詞を思い返す。『どこにいきたいんだっけ?』 自己嫌悪はドラッグだ。すれ違ったラッパーの人が言ってた。不治の病。 この先に、自分が足りないと思っているものが全部足りたとして、街の片隅で泣いている人に気づいて抱きしめてあげることは出来るだろうか。 やさし

          やさしくしてくれた人のことをちゃんと思い出せるだろうか

          いいわけ

          父ちゃんとの温泉旅行は、まだ続く。 心だけ定山渓に取り残されて、 繰り返された先の、先の見えない日常の中にいる。 寝る前に、父親が「ラジオを聞きたい」と言い出した。 いつも同じラジオを聞きながら、眠りについているらしい。9時就寝、3時起床。パン屋さん?早起きして朝ごはんを食べて新聞を読んで、1時間歩いて出勤しているらしい。 スマホでダウンロードしてみたら聞けそうだったので、サイドテーブルにスマホを置いて、電気を消して流してみた。いつものラジオを聞くことが出来た父親は、数分

          恥ずかしい

          「何にも失いたくない人なんですね」 2ヶ月くらい前、信頼する友達にそう言われた。一応、いい意味で捉えたけれど、よくよく考えるとあんまり良い意味じゃない。恥ずかしい事だと思った。 そんな恥ずかしい男は、 父の日に、父の奢りで 父親と初めての温泉旅行に来ている。 恥ずかしい。 6歳から別々に暮らしている父とは、頻度は変われど定期的にご飯に行ったり、お墓参りに行ったり、ご飯に行ったり、お墓参りに行ったりしていた。 ここ数年の間に、大切な友達の父親が2人亡くなった。 その友達

          もうひとつのこころ

          夜中の漫画喫茶。 明大前、深夜1時ごろ。 まだ梅雨入りするちょっと前、ワンピースを1巻から読み直したくて、深夜に漫画喫茶に入った。 予備校の自習室を思い出す。 静かでゆっくりとした空間。 街は眠っているのに、みんな音を立てないように作り上げた豊かさにつつまれる。 外に出てみる。 眠ったあとの東京は、なんだか優しい気がした。 みんな武器をしまっている。 あの町の戦士もみんな、刀を置いて眠る。 夜はおだやかで、優しい。優しさは平等である。 とてつもなく長い時間をかけて、

          もうひとつのこころ

          ひとりごと

          散歩にどハマりしている。というか、散歩に取り憑かれている。休みの日は、着たい服を着て、街を徘徊するだけ徘徊して、疲れたら座って本を読んでいる。映画館に行ってパンフレットだけ持って帰ったり、着いたその時間にたまたまやっていた映画を観て帰ったり、やっぱり家でご飯作ろう、となってすぐに帰ることもある。 身体が情報を欲しがっている感覚を強く感じる。音、声、景色、感情。出来るだけ何にでも、感情ごと飛び込んで、へとへとになるまで情報の中にいく。外から見るんじゃなくて、出来るだけ中からそ

          ひとりごと

          はじめての憧れ

          2023年、4月10日、月曜日。 平日の昼間から湯船に浸かって、このことばを書いている。いつか買った防水スピーカーで、「美貌の青空」を流している。外は晴れている。17時ごろから予定がある。 「はじめての憧れ」 あこがれとはなんだろう、と考える。 りっしんべんに、わっぱ 心にこども なので 心が子供に戻る感じかな? えー、あれずるい! あれほしい! かわいい! あんな風になりたい! あんな服を着たい。 そんな風に焦がれる。 ずっと憧れてる人がいる。5年くらい会ってな

          はじめての憧れ

          ひとりひとり、街の空気

          最近引っ越した。埃の多い町から、日差しが床に跳ね返る明るい街に来た。これは、何度も体験してきたことだけれど。毎日通る道が変わる。買い物する場所、日差しの浴び方から、星の見え方まで、全部変わる。 これまでの歩き方で、街を歩いてみる。イヤホンを外して街を見てみる。覗いてみる。 街を行く人の服装や髪型。買い物や、会話の内容。自分は浮いている感覚があった。 風来坊は街に座る。周りを見る。自分を見る。あんな服を着たいと思う。ああいう風に手を繋ぎたいと思う。過ごす場所や会う人の存在で

          ひとりひとり、街の空気

          秋の風

          急に涼しくなって、季節の変わり目を感じる。 この季節の夕方は、帰り道って感じがするから、何かとお別れする感じがして、勝手に寂しい気持ちになる。 美しい景色。現実がわからなくなる。 なんでもない大切な記憶が思い起こされる。 学校が終わって、友達と公園でキックベースをしにいく。月500円のお小遣い。毎月コロコロコミックを買って余った小銭で、コンビニの赤りんご青りんご84円のジュースを買って、公園に向かう。怪我したり、喧嘩したり、仲間はずれにしたりされたり、泣いたり怒ったり。そ

          そこにあった物語 「ゴールド」

          この度、長編映画「ゴールド」の製作が始まる。 誰かに簡単に形容されたくない 僕の人生において、とてもとても大きな、大切な物語。 始まって、終わってしまう前に、 今の気持ちを残しておきたいと思います。 「ゴールド」(監督/知多良) 2020年に製作・公開されたグッナイ小形さんの楽曲「きみは、ぼくの東京だった」のミュージックビデオのリハーサル用脚本から生まれた物語。 監督は、知多良さん。 自分が初めて出演した短編映画「見えない、光」の監督でもある。 世界の端っこまで丁寧に見

          そこにあった物語 「ゴールド」