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ぜんぶ いっぽんのせんのうえ

なんで、コレに惹かれるんだろう…

とある書籍を眺めながら、考えた。

その書籍は、書道の教本。

わたしは字を書くのは下手だが、書は好きなのだ。

書道をやっている、とは、口が裂けても言えない。
書道としての基本は、まるで無視だから。

墨の黒が好きで。
文字の「カタチ」が好きで。
書も、絵と同じような感覚で見ている。
だから、わたしの「書」は「画」でもある。

いや、そんなことは、どうでもいい。

書籍は、4種類前に置いていた。

一冊は、書道の教本。
一冊は、書いた「書作品」を、どう使うかというアイデア本
一冊は、霊符の本。
一冊は、博物館の図録。

そして。
それをあっちへ行きこっちへ行きと、同時にめくって眺めながら。
練っていたのは、「陶器作品」のアイデアだった。


それは、わたしの中では、明確なつながりを持った、同じカテゴリの中に存在する。
少なくとも、今この時においては。

それを意識しながら。
ふと、浮かんできたのが、冒頭の問いだった。


なぜ、コレに、惹かれるのだろう。

この書体に。
この活かし方に。
この描線に。
このフォルムと質感に。


その時、上から降ってきた閃きは

「<ちゃんとの呪い>に気付いたら、その先はすでに見えているはずだ」

という、どこからともなく響いた声だった。


<ちゃんとの呪い>とは。
先日、Facebookの某所で呟いていたことなのだが。

「ちゃんとしなくてはならない」とか
「ちゃんとしたモノでなくては出してはならない」とか
「ちゃんときっちり組み上げることができないのならば扱ってはならない」とか

その手の、制限だ。

制限、というには強過ぎるきらいがあり。
それによって、自分自身の行動が多大に制約を受けるという性質のもので。

呪い

というのが、ふさわしい。

そんな風に思う、いくつかの「観念」のこと。


最近、モノを作る、という上で、この呪いが大きく発動していると気がついた時があった。
そのことを、Facebookに呟いたのだった。


なぜ惹かれるのか、を問いかけ。
<ちゃんとの呪い>の先は見えているはず...という、回答らしき閃き。

呪いがあるからこそ、惹かれる...ということか?

そんなことを、思った。
その次の瞬間。

背筋に、ざわっと、強めの電気風呂みたいな感触が走った。

それは、嫌なざわつきではなく、逆。

わくわく
うきうき
そういう感覚は、わたしは疎い。
表現として使うことはあるけれど、実際には、ほぼ感じない。

この時のざわつきは、すごく、エネルギー値の高い感覚だった。

近い感覚を挙げるなら、高揚感。
テンションがガーンと跳ね上がる感じ。

武者震い
って、こういう感じかも。
そんな風にも思った。

「ああ、これか」

と、思った。

好きなことをする、とか。
わくわくを大事にする、とか。
心地よい方を選ぶ、とか。

そういう表現は、どれも、「言葉ではわかるけど、自分の感覚からは遠い」気がする。

そこに、没入できない。

しかし、この時のざわつき...その高揚感は。
根源的なところから出てきたものだな、と感じた。

「血が騒ぐ」

という。

そこに、
「ちゃんとできないなら手出しするべきではない」だの
「ちゃんとできる前提でやるのでなきゃダメだ」だの
「ちゃんとできるまで研鑽すべき」だの

そんなのは、単なるノイズでしかない。

この書体を見ると、血が騒ぐ。
上手く書けるかどうか、基礎ができてるかどうか、そんなの関係ない。

この使い方をされた作品を見ると、血が騒ぐ。
カッコイイとかオシャレとか、いろんな形容詞はあるけど、そこじゃない。

この描線の構成図を見ると、血が騒ぐ。
効果がどうとか動かせるのかとか、それはわたしの領域ではない。

この細工を見ると、血が騒ぐ。
高度すぎる技工は今からじゃ身につかない…とかわかってるけど、だから何だ。

そう。
全て、そういう感じで。
理屈で「やめた方がいい」っていくらわかってても、それが響かない。

というか。

理屈では、自分の領域ではないし未熟すぎると、重々承知している。

が。
それが抑止力として機能しきらない。

少しは、働く。
だから、今でずっと、イチイチ「でもなあ」って思って、中途半端にやってきた。

だけど、だからいつまでも未練になる。

この「血が騒ぐ」感じは...一度その水に全身浸かってみる以外に、満足も諦めも、できない種類のものだ。


10年近く前、日本の神様を描き始めた頃にも、この感覚があった。

和の神を念う時の、一番強い感覚は、「血が騒ぐ」だった。


これに従うことだ。

それが、自分の最適解。

改めて。
「画道」という道を選んできた意味を、感じる。

あらゆる手技は、すべて画という線の上に並ぶ。


あの、強めの電気風呂みたいな感じを、忘れないようにしよう。

あのざわめきを。


他人がどう言っても関係ない。
自分の血が沸く感じは、他の誰にも代われない、わたしだけの感覚だから。



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