見出し画像

オリジナルの呼び方を尊重しよう

フランス人の夫に聞かれ、いつも困ることがあります。

漢字で書かれた固有名詞をどう読むのか。

人の名前で困ることもありますが、それはその人の親がそう決めた、もしくは先祖からそう読むことにしている、ということなので、私が知らなくても仕方がないじゃないか、と開き直れるのですが、地名はそうはいきません。

「ん~、なんて読むんだろう」
考え込むたびに、夫に失笑されてしまいます。
「日本人なのに、なんでわからないの?」

分かるかぁーーーーー!

と叫びたくなる地名が、関西には特に多い。
私は地元の人でも専門家でもないので、すべてを答えられるはずもありません。

そんなことを言い始めると、京都の「七条」は、
ななじょう
と呼ぶのか、
しちじょう
と呼ぶのか。
挙句の果てに、地元の人に京言葉では「ひっちょう」と呼ぶのが正しい、などと言われれば、具の根も出ません。

そんな風に、漢字の読み方は本当に難しい。
でも、一つだけ、ずっと気になっていることがあるのです。

それは、中国人の名前の読み方。

例えば、中国の国家主席、習近平。
日本では、「しゅうきんぺい」と呼んでいますが、国際社会では中国で呼ばれている通りの発音で、「シー・チンピン」と呼ばれています。
外国人と話をする時に「しゅう・きんぺい」と言うと、全員に「誰それ?」という顔をされてしまいます。
他にも、みんなが「マオ・ツォートン」と言っていて、誰の話をしているのかと思うと、毛沢東だったり・・・。

とはいうものの、自国の名前の呼び方をしている人たちは、日本人だけではないのも確かです。

随分前のことですが、伊達公子さんがウィンブルドンに出場した時のことです。
テニスでは、ゲームを取った選手の名前を審判がコールするのですが、伊達選手の呼ばれ方を聞いて、ひっくり返りそうになりました。

「デイト」

まぁ、そうですよね。
伊達をアルファベットで書くと「DATE」。これって英語では日付という意味で、読み方は「デイト」。そこはイギリスのウィンブルドン。英語読みをすると間違いではないのですが、彼女は「ダテ」さんですよね。

他にもアメリカ人が、アニエスベー(agnès b.)のことを「アグネスビー」と呼んでいて(しかもアメリカアクセントの英語で)、何のことかさっぱりわからず、「とにかくそういう名前のブランドがあるのね」なんて言いながら、会話を進めた記憶があります。

名前はその国によって呼び方が変わる、というのは昔からありました。
例えば、「大天使ミカエル」。
ミカエルはラテン語の発音で、日本ではオリジナルの呼び方を採用していますが、西洋では国によって違います。

ドイツ語では「ミヒャエル(Michael)」、フランス語では「ミシェル(Michel)」(モン・サン・ミッシェルなど聞いたことがありますよね?日本語に訳すと、聖ミカエル山という意味です)、スペイン語では「ミゲル (Miguel)」 イタリア語では「ミケーレ(Michele)」、そして英語では「マイケル(Michael)」です。
国によって呼びやすい呼び名に変えられ、それに伴い綴りが微妙に変わっていったのが分かります。

聖書に出てくる大天使なので、口伝てで話をしているうちに、その国の発音しやすい名前に変わっていったのだろうな、と察しはつくのですが、日本はちゃんとオリジナルの名前を使っています。

アニエスベーでもわかるように、Agnesを英語読みすると、確かに「アグネス」となりますが、日本ではフランス語の呼び方を忠実に(?!)カタカナで表し、呼んでいます。
ちなみに、フランス語ではgneを「ニェ」と発音するのですが、「agnès b.」とeの上にアクセントがついているので、アニエスと読むのです。

話をもとに戻すと、関西に不思議な名前が多いのは、難波京、平城京、平安京などと、昔都があったために独特の文化が育まれ、古い言葉がそのまま地名に残っていたり、当時海の玄関口だった難波津にはたくさんの渡来人がやってきて、外国の地名や人名が地名になったこともあったからなのだそうです。
そしてその地名には、現在の私たちには読めないような漢字をそのまま使っていることもあるため、難読地名がたくさんある、というわけです。

とにかく、例を挙げれば枚挙にいとまがないほど、日本ではオリジナルの呼び方を尊重している歴史があります。

しかも、韓国の大統領、文在寅は、「ぶん・ざいいん」と呼んでもいいところを、ちゃんと「ムン・ジェイン」と呼んでいます。

なのに、なぜ中国人だけ日本語読みのままなのでしょう?!

もう21世紀です。
中国の国家主席は「シー・チンピン」とその国のオリジナルの呼び方で呼んでも“ええじゃないか”と思うのですが、みなさんはどう思いますか?

オリジナルの呼び方ができない人は、何人であろうと笑ってやろうじゃありませんか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?