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《③十人十色の自己決定》北欧留学に学ぶ障害者福祉の在り方《デンマーク人にインタビュー》

《自己決定ってなんですか?》

みんなの人気者ソーレンは、
音楽に絵の才能もある。

明るくて優しい彼に
恒例のこの質問をしてみた。
《自己決定ってなんですか?》
すると彼は、少し考えてから
「自分が何をしたいのか、
なぜしたいのか
考えながら自分で決定すること。」
と話す。
さらに続けて、
「ときどき、やりたいことが
分からない時もあると思うけど、
それを超えてくこと」
と自己決定について話してくれた。

ソーレンが当時、
学生ヘルパーとして
アシスタントしていたのは、
電動車椅子をスイスイ動かす
活発な女の子Sちゃん。

彼女とのコミュニケーションの方法は、
タブレット型の
コミュニケーションボードが主で、
彼女独特のボディーランゲージも
ときどき活用している。

そんな彼女を
サポートするにあたって
気をつけていることは?
と聞いてみた。

サポート面と尊重面。

「僕は、介助する面では
彼女の手となり足となるわけだけど、
彼女が行動する面においては
必ずステップバックして周りにいるように
心がけているよ。」と話す。

確かに彼のサポートの方法は、
親身になってあちこちついていく
というイメージはない。
むしろ活発に動き回る彼女は
自由で楽しそうだったし、
故に彼女自身、友達も多かった。

それでも、ひとしきり遊び終えると
食堂でポーカーや
仲間と会話をしている彼の元へ
スーッと車椅子で帰ってくるのだ。

そして彼に「どこ言ってたの?」とか
聞かれたり、
彼女からのメッセージを受けて、
彼らが席を外して消えていく
そんな光景をよく見ていた。

それは彼が言ったように
彼女の意思や行動を尊重していて、
お互いにとって良い関係性を
築けていたからこそできたこと。

「彼女の行動や決定したことは、
まずは好きなようにやってもらう。
それで
何か彼女が気づくことがあれば
彼女は必ず戻って来る。
そんな時、
必ずそばにいてあげれるようにする。」
とサポートする面と
尊重する面を
一緒に持つ彼らしさがあった。

「自己決定の中で
彼女が決定したことに対して
少し疑問に感じたら彼女自身に聞いてみる。
《これは本当に正しいこと?とか、
家族との約束はどうだったっけ?》って。
それはすごく難しい部分でもあるけどね。」

オープンマインド


イラストが得意。楽器も器用にこなすソーレン。

彼に
《エグモントで学んだことは?》
と聞いてみた。

「僕は、ハンディーのある人と
今まで関わったことがなかった。
だから、ここに来てみて
自分の思っていた
ハンディーのある人のイメージと
今の彼らのイメージを変えられたこと、
それはすごく特別なことだった。

学生をしながら働くことに
すごくやりがいを感じるし、
以前よりももっと自分自身、
オープンマインドになった気がする。」

みんなの人気者だと思っていた
彼の少し内気な一面を
見れたような気がしていた。

新しい環境に身を置いて
自分自身の変化に気付き学ぶ若者が、
ここにはたくさんいるのだろう、と彼の
インタビューを終えて気付かされたのだ。
十人十色の自己決定には
十人十色のサポートがある。



今シリーズの記事について

《十人十色の自己決定》は
「健常者と障害者」
という目には見えない隔たりに
疑問を感じながら飛び込んだ
北欧デンマークにある
エグモントホイスコーレンでの学生lifeは
「環境さえあれば、障害なんて越えていく」
まさにそんなワクワクドキドキが
止まらない日々だった。

エグモント卒業間近にふと考えた
「障害のある人の自己決定」について
障害のあるユーザーをサポートする
様々な人にインタビューした。


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