背のさむいひとのねむり

ぜんたいをススキになって見ていたと気付く つよめに肩をたたかれ

投げ出され世界の外で聴いていた 撫でられ何者にもならず

数日を葡萄の粒のおのおのの暗さと過ごす 今日は雨ふり

背のさむいひとのねむりを見ていると、音色のうつくしい薄い月

金属に似た身体ひとつを得てゆく秋立つときの寂しさの空

まずわたしを助けてほしい 膝に手を置いて季節をすっかり失くす

「知らない」と言ったきりあなたのねむり 知らないということのしんどさ

いつまでねむるつもりだろうか 寝返りの腕を見ながらしろい桃食む


「かばん」2020年10月号

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