汚れっぱなしの鳩の首ひくく動かしてわたしの後ろを飛び去ってゆく


須磨行きの普通に乗り換えるときに遥か日傘をすぼめゆきたり


「御影、御影、」 こっくりと時じくの影乗す車輛に遠く揺られる


うすぐらき痛みの募るあかつきはサイレンの音に覚めているもの


壊さぬよう壊さぬように手花火のいちばん最後、線香花火


くずれてもどちらでもいい冷奴のせたる器ごとを包む闇


ジュエリーを取り外されて夜を見る胸突き出せる白きトルソー


秋の足は畳の水に冷えてゆく捩菖蒲なお尖る夕べに



(かばん2018年12月号)

#短歌

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