見出し画像

【士業の賠償】責任論と損害論

 損害賠償責任を負うかどうかを考えるとき、責任論と損害論を検討します。

 責任論は責任を負うかどうかの理屈が立つのか、

 損害論は責任論で責任を負うという理屈が立つ場合に損害額がいくらとなるのか、

 という問題です。

 基本は民法709条の一般の不法行為の要件に該当するかどうかというものです。

 一般の人の場合は交通事故が典型です。

 前方を注視する義務を怠って衝突させてしまい、修理費の損害を与えたとかです。

 前半の義務を怠ったというのが責任論、修理費の損害を与えたというのが損害論です。

 弁護士の場合、責任論で理屈が立つというのはかなり困難です。代理人としての活動は依頼者側の問題で済む話ではなく、必ず利害が対立する相手方の問題もありますし、訴訟の場合は裁判所の判断の問題もありますからね。ただ、単純に不服申立ての期限を徒過したとかいう場合は簡単です。

 それに対して税理士の場合、責任論で理屈が立つ場合がさほど困難ではないようです。それは、届出を徒過したというケースも一定数あるからのようです。消費税で言えば簡易課税の届出をする方が負担が少ないのにしなかったとか、逆に仕入税額控除ができたから簡易課税ではなく本則課税にするべきだったのにしなかったからとか、責任論が比較的わかりやすいようです。

 また、損害論での損害額も、届出をする場合としない場合とでそれぞれの税額が計算できてしまうので、賠償の金額の算定も比較的容易のようです。

 ちなみに会計士の場合、弁護士以上に難しいように感じます。

 監査対象の企業の財務諸表が適正に表示されていないのに適正に表示されているという意見表明をするなどの場合に、責任を負うことがあり得ますが、会計上の見積もりの場合など、合理的な金額に幅があったりするので責任を負うとする理屈を立てるのが難しいように思います。また、損害額については、上場企業等が監査の対象になり、一般の投資家による株主代表訴訟などに発展しかねないので巨額になりえます。粉飾決算の場合だったりすると会計士の刑事責任が問われることもあり得ます。

 以上はとても感覚的な話ですが取り上げました。読んでいただきありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?