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「大丈夫」の処方箋がまた一つ増えた 〜season1〜

昨年12月15日に胆嚢結石症の手術をした。

10年近く大きな胆石があったのだが、炎症を起こすことなく静かにおとなしくしていたので経過観察。
最近では胆石の存在すら忘れていた。

11月半ばから食欲がなくなり、急に胃が痛くなってきて。
これは以前に経験したことがある急性胃炎の症状だと、胃薬を飲んでみたけど一向に良くならず。

それから1週間ほど経った頃、今度はみぞおちや背中、右脇腹が痛くなり、熱はないけど体がだるくてどんどん辛くなってきて。

「なんか体がしんどくて・・・もしかしたらまた心臓が悪くなってるかも」

あまりにも回復しない状況に不安が大きくなり、娘に連絡して病院に付き添ってもらうことにした。

駆けつけてくれた娘は私を見るなり、びっくりしてこう言った。

「めっちゃ黄色いやん」

自分の顔色に全く気づいていなかった私は鏡を見て驚いた。

「ほんまや、めっちゃ黄色い」

これはやばい。黄疸やん。ほんまのやばいやつ。
笑ってる場合ではない、これは深刻な状態だってことはすぐわかったけど。
関西人の血のせいか、こんな深刻な状況だからこそ笑わせないとあかん!妙な使命感にかられてしまうのがちょっと悲しいけど、ちょっとおもしろい。

「なんか蜜柑みたいじゃない?今日から蜜柑ちゃんって呼んでいいよ」

岸田蜜柑、悪くない。いや、椎名林檎みたいで可愛いし。

良いか悪いかは別として、人はどんな状況であっても「おもしろい&おかしい」を求めるものなのなのかもしれない。

娘は呆れていた。

「ゆーとる場合ちゃう、はよ病院いくで」
「ほんで、きっと入院やから、用意もしていこな」

娘はテキパキとかかりつけである大学病院の救急外来に電話をし、診察の予約をとり、荷物をサッとまとめてタクシーをよんで、蜜柑の私に付き添ってくれた。

血液検査をしてCTをとって、私の黄色い顔を見て、速攻で入院が決まった。

そりゃそうよね、黄疸まで出てるんだし、とんでもないこのしんどさ、そりゃ入院だよね。
わかっちゃいたけど、やっぱりショック。

入院して、内視鏡での処置、場合によっては外科的処置を行いますという簡単な説明の後、なにか質問はありますかと先生から言われた私は、「痛いですか?」いたって真面目に真剣に、まるで小学生のような質問だけをした。

「え?あぁ、まぁそれはちょっとは・・・ねぇ・・・人にもよりますから」

少し困ったように言葉を選んで答えてくださる先生の優しさを感じつつ、痛いんやなって察しつつ、どうやって痛くないようにしてもらおうかと考える私。なんとも大人げない。でも、痛いのだけは嫌なのです。

今回、お世話になるのは消化器内科。

これまでこの大学病院でお世話になったのは、心臓血管外科、形成外科、そしおて口腔外科と、外科ばかり。今回は初めての内科。

外科は南病棟(海側)、内科は北病棟(山側)と、この病院では決まっていた。今回は初の内科なので初の北病棟。山側の景色は新鮮で、街の明かりが何ともきれいだった。

なーんて、こんなのんきなことを言っているのも入院初日だけだった。

早速、精密検査が始まった。
胆石の位置や大きさや、今の体調がどんな状態なのか、次第にわかってきた。

診断は「総胆管結石」だった。

胆嚢にできた結石が胆嚢から飛び出し、総胆管でつまって胆汁が流れなくなっていて、急性膵炎になる手前という、まあまあな重症という状況。

速攻で胆汁が流れる処置をすることが決まった。

口から内視鏡を入れて、総胆管と結石の間にステントを入れるという処置。とても難しい処置だという説明を受けていたのでこわかった。

でもそれよりこわいのが、口から内視鏡を入れるという・・・胃カメラと同様の工程。喉に管を入れるという、想像しただけでオエーッてなる、苦しくなるアレです。

ぜったい痛いやん。人によるとかでなく、どの人も痛いし苦しいやつ。先生の嘘つき。

いや先生は嘘つきではなかった。
医学の進歩はすごかった。

眠るお薬を点滴で入れられた瞬間、グースカ眠ってしまった私は、
「岸田さーん、無事に終わりましたよー」という先生の声で起こされた。

苦しい痛いどころか、いっさい何も覚えていない。ありがたい。

無事に内視鏡での処置は成功。ありがたい。

でも、これで一件落着ではなかった。
ありがたいけど、ありがたくないことが待っていた。

「胆汁は流れるようになりましたが、結石が大きすぎて内科ではこれ以上のことはできません。外科にバトンタッチします。おそらく手術になるかと思います」

これでめでたく退院かと思いきや、どうやらそう簡単にはいかないらしい。

それでも、命にかかわるような病気ではないと医師から聞いていたし、
最近では胆石の手術は腹腔鏡手術がほとんどで、傷も小さく、入院だって数日ですむってことも知っていた。

これからクリスマス、お正月と楽しいイベントが待っている。

今年はクリスマスツリーを新調するし、娘と一緒におせち料理も作るし。
それまでにグループホームにいる母にも会いに行くしって、楽しみにしている予定がいっぱいある。

こうなったら一刻も早く、私を黄色くする、岸田蜜柑に改名させようとしているお腹の中の石を、スッキリさっぱり取り出してー!

ちょっとくらい痛くても入院がのびても、全然がんばれますよ、私。

だって、これまでに2回も。2回も。
生きるか死ぬかの心臓の大手術を乗り越えたし、痛い苦しい辛いも耐えてこれた私なんですから。

これくらいチョチョイのチョイなんですから、私。

いざとなってからの開き直りからムクムクと湧き上がってくる強さは私の十八番なのですが、この後、その強さはあっという間にスンって消えてしまうのでした。

この続きは「season2」でまた書きます。











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