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「無用の用」を大事に

今日のおすすめの一冊は、田口佳史氏の『超訳 老子の言葉』(三笠書房)です。その中から『「自慢」はあなたを滅ぼす』という題でブログを書きました。

本書の中に『「無用の用」を大事に』という心に響く言葉がありました。

《有(う)の以(もっ)て利を為すは、無の以て用を為せばなり。》(無用第十一) 

目先の利益で有用・無用を決めつけてはいけない。いまは無用に思えても、先々必要になることもあれば、何の役にも立っていないようでいて、見えないところで大事な役割を果たしているものもあるのだから。「無用の用」と いうことをよく考えなさい。 

日本はひところ、行政も企業もムダを省くことに一生懸命でした。財政・企業業績を立て直すために効率化を図る、それは当然、必要なことです。 けれども、短期的な視点のみで、あれもムダ、これもムダと、バサバサと切り捨てていくのは考えものです。

中長期的視点から見れば、将来につながる有効な投資になるかもしれないからです。また、一見 “金食い虫” のように見える部門や事業だって、売り上げに直結していないだけで、実は組織全体を支える重要な働きをしている場合だって、よくあります。

そこら辺をよく考えて、本当にムダなのか、目に見えないところで役に立ってはいないか、といったことを見極める必要があります。 

老子はこの「無用の用」について、三つ、おもしろいたとえをしています。 

一つは、車輪のハブとスポーク。中心から放射状に伸びているスポークは、一つのハブに集中しています。このハブは一見、ムダに見えますが、「取っちゃえ」というわけにはいきません。ハブがあるからこそ、車輪は回転してその用を為すのです。

二つ目は、粘土をこねてつくる器。真ん中がくぼみになっているからといって、「空洞にしておくのはもったいない」と埋めてしまったら、どうですか? 器として使えなくなってしまいます。 

三つ目は、室の空間。人の入る空間をムダだと言って埋めてしまったら、人が中に入ることができず、室としての用を為さないわけです。こういった例から、老子は「無」が「有」の働きを支えていることを説明しているのです。 

その意味では、手帳に空白が多いのはもったいないとばかりに、スケジュールをびっしり詰め込む、なんて人も、「無用の用」がわかっていない典型例と言えます。ただひたすら忙しくして心身の調子を狂わせたいのでしょうか。

多少は空白の時間がないと、余裕をもって仕事ができないし、心身も休まる暇がないではありませんか。ス ケジュールで埋め尽くされた手帳は、けっして自慢にはならないのです。

スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱する「計画的偶発性(プランド・ハプンスタンス)」という理論がある。それは成功者の8割は、予想しない偶発的なことによって生成される、というもの。

自ら目標を立てたり、計画をしたりしたことではなく、偶然がその成功に大きく関わってくるというものだ。一見すると何の脈略もない偶然が、成功を招くということで、この「無用の用」と同じだ。

逆に言うと、偶然を排し、効率一辺倒で、目標到達までわき目も振らずに進んだ人は、ほとんど成功しないということだ。人生は、いつなんどき、何が役に立つか分からない。とくに人と人のご縁はそういうものだ。「無用の用」を大事にしたい。

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