ユニット型の介護施設は、このさき生き残れるのか?

いま働きだしている施設は、ある福祉事業団が経営する高級老人ホームで、配属先は介護棟とよばれるユニットの方である。その体制や建物の外観こそ立派だけれども、その内実はどうなのか。
 以前もユニット型の特養で働いた経験もあるだけに知っていたことではあるものの、ユニットケアはなかなかたいへんである。

勤務体制はユニットに職員一人だけ、残りの人員は入浴介助にいったりする。だから、困ったときやちょっと聞きたいことがあるときに、人に訊くことができない、助けを呼べない不便さは大きい
 仕方がないからPHSで連絡を取り合うわけだが、これもなかなか不便なものである。たとえば、おむつ交換やトイレ介助のときに、両手が使えない状況でPHSがかかってきたらどう感じるだろうか? こんなことは日常茶飯事である。
 
ユニット型の施設では、一人の職員がなんでも同時並行で効率的に業務をこなしていく必要があり、マルチタスクな多重業務に陥りがちである。近年いわれていることに、人間の脳はマルチタスクに向いておらず、シングルタスクのほうがストレスが少ないことがわかっているので、このようなユニットケアは職員の負担も大きいといえる。
 また、ユニット型の施設ではチームワークを活かすことができないと感じている。逆にいえば、ユニットに一人だけという状況は、人間関係に煩わされることも少ない、というメリットもある。負担は大きいけれども、気楽に働ける側面もあるといえる。

今後、ますます人員確保が厳しくなっていく介護施設において、ユニット型の施設はさらに厳しい状況におかれていくように思える。すでに述べたように、職員に求めるスペックが高く、しかも負担が大きく、チームワークによって相互に支援することもやりにくいという問題があるからである。
 それでは、介護ロボットの普及によって人手不足をカバーできないものなのか? 残念ながら、近年さかんに取り沙汰されている生成AIだのチャットGTPだのといったテクノロジーは、介護業界にはまるで無縁である。
 一部の施設において、(自立した)高齢者の話し相手に介護ロボットが活用されつつある、みたいなニュースを見かけたことがある。せいぜいその程度の活用の仕方のようで、肝心かなめの介護の主要業務について介護ロボットが活躍する可能性はほとんどないと予想している

介護業界においてロボットが活用されにくいのは、技術的な問題にくわえて、資源の不足の問題(半導体、電力など)、ロボット取得や維持にかかるコストの問題があるだろう。
 わたしは仕事としてケアに関わる介護職を続けていきたいと思っているけれども、ユニット型の施設の未来には消極的、悲観的である。今後、介護業界はいったいどうなっていくのだろうか? なにか革新的なブレークスルーでもなければ、介護現場はひたすら消耗戦を強いられていく一方でしょう。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?