介護職、アクシデントとの向き合い方

介護施設で働いていて、避けては通れないものがインシデント・アクシデント報告だろう。事故報告書といったりもする。正直言って、できるものなら書きたくないし、避けて通りたいものである。

とくにいまの職場では、アクシデントに関して報告書を書き、報告し、さらに家族(身元引受人)に連絡して、カンファレンスを開き、一週間後とかに効果測定までやらなければならないのだ。ここまでを、事故を発見した当事者が主体となってやらなければならない煩雑さ、うっとうしさは大きいものがある。
 また人手が最低限の介護施設において、こういった事柄をふだんの業務とは別にやらなければならないわけだ。いちいち報告して上げていたら、最悪業務が回らなくなるおそれもある。現場で働く介護職として、インシデント・アクシデントの危険をつねに気にしながら働くことは、士気や意欲を削がれるものである。
 いままで働いてきて、介護職が家族への連絡とかカンファレンスや効果測定までをしっかりやるところは珍しく、ある意味ちゃんとした施設であるとはいえるかもしれない。しかし、そのことが介護職として働きやすいかと言えばまったくそんなことはない。

つい先日も、早番で出勤して早々に遭遇してしまったのが、入居者が長座になって座っている光景である。独歩で歩ける方なら、自分で座った可能性もあるにはあるだろう。しかし、ふつうに考えたら「転倒して尻もちをついたのではないか」と考えられるだろう。
 早番の朝は、猛烈に忙しい。これから入居者を何人も起こして、トイレに連れて行ったりおむつ交換をして、それから身支度を整えて朝食の準備にかからなければならないのである。そんな朝に、時としてインシデントやアクシデントが起こる。
 とりあえずこの一件は、あえて報告せずに保留にし様子を見ることにした。その後、外傷はなく、歩行能力に問題もなく、疼痛の訴えもなく、ADLに支障がないことを確認してから、報告しないことに決めた。べつの言い方をすれば、アクシデントのもみ消しを図ったのである。

起きてしまったアクシデントを“隠蔽”することに対して、介護職として倫理的に問題があると考える向きもあるだろう。そこは、すでに挙げた理由にくわえて、ケースバイケースで柔軟に判断する必要があると考えている。なんでもかんでも報告に上げればいいというものではないと思う。
その際に、判断の基準となるような考え方を以下に示したいと思う。
・転倒転落なら、実際にその場に居合わせて自分で目撃したかどうか
・入居者に明らかな外傷が見つかったり、ADLに支障があるか否か
・認知機能がしっかりした方なら、ごまかすのは難しい
・他に目撃者がいないか、監視カメラの有無。もしいたら言うまでもなく、隠蔽するのは無理でしょう。
 もし上記のうち一つでも当てはまるのなら、アクシデントとして報告すべきでしょう。そうでないなら、そこは柔軟に考える必要がある。

このように、介護環境がますます厳しくなっていく時代において、介護職には“要領のよさ”が求められてるような気がしてならない。なんでもかんでもバカ正直にやる人間は、自分の首をしめてるわけで、いつか自滅するのではないか。



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