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「思考の整理学」を読みました

「思考の整理学」は、自分で考える方法を提案してくれている。これらが唯一の正解ではない。こんな方法もあるよ、と教えてくれている。この本を読むだけで、すぐに考える力が養われるわけではない。でも、意識せずに行っている思考の経過を、こんなことしてるかも、と整理される。こんなことしたことない、と新たな手段も得られる。とてもおもしろい。

自分で問題提起して、自分で解くから面白い。

思考の整理に役立つことを、まとめてみる。

1.寝させる

疑問やテーマは、ひとつだけでは多すぎる。ひとつだけでは偏るし、そのテーマが上手くいかなかった時に困ってしまう。

複数のテーマを同時進行して、しばらく寝かせておく。そのまま、腐っていくものもあれば、醗酵していくものもある。アイデアが複数あれば、どこかで何かがつながって、新たなアイデアが生まれることもある。アイデアのタネを、心の中であたためておく。

ひとつのことばかり考えているのは、かえって良くない。考えが固まってしまうから。こだわりは、大局を見失う危険がある。頭をよく働かせるには、忘れることが大切だ。

あるとき思い出したり、ピンときた時に、そのテーマを深めていく。大切なものは、忘れない。

直観は、目に見えない何かの導きであるようでも、実は閃きを生む下準備(知識、経験、感情など)がある場合に起きる。

知識や出来事を、どう結びつけるか。それが個性となる。ありふれた素材と素材が思いもかけないものを生み出す時に、おもしろさは生まれる。作るよりも、結びつける。発想の妙は、そこにある。

2.寝る

アイデアだけでなく、人も寝させる。

夜の作業よりも、朝がいい。
食後よりも、食前(空腹時)がいい。

昼寝をすれば、朝の状態は、また作れる。寝る事で、いらない情報を消去できる。体力の回復だけでなく、脳の掃除もしてくれる。アイデアの芽も育まれる。いい事ずくめだ。

発見は、朝を好む。

3.三つの最中

(1)三上

【すぐれた考えがよく浮ぶ3つの場所(三上)】
 ①馬上(移動中)
 ②枕上(朝、目が覚めた時)
 ③厠上(トイレ)

ものを考えるときには、心をゆったり、ぼんやり、自由にさせる。あまり緊張したり、力んだり、焦ってはいけない。

他のことはできないけれど、心は遊んでいる。こういう状態が創造的思考に適しているらしい。

もちろん、考え事があるから、着想が出てくる。アイデアのタネは必要だ。アイデアを思いついたら、すぐにメモする。ふっと頭に浮かんだものはふっと消えてしまいやすい。アイデアを寝させるためにも、書いておく。

(2)三多

【文章上達の秘訣三ヵ条(三多)】
 ①看多(多くの本を読むこと)
 ②做多(多く文を作ること)
 ③商量多(多く工夫し、推敲すること)

これらは、文章が上達するだけでなく、考えをまとめるプロセスでもある。

(3)三中

【良い考えが浮かぶ状態(三中)】
 ①無我夢中
 ②散歩中
 ③入浴中

日常生活のいたるところで、良い考えが浮かぶ機会はあるのだ。

4.別のことをする

同じことを続けていると、疲労が蓄積し、能率が悪くなる。ひとつの仕事をしたら、まったく別のことをする。別の活動なら、休憩をしなくてもリフレッシュできる。もちろん、休憩もするのもいい。お茶をしたり、散歩をする。運動もよい。場所を変えると、気分も変わる。

学校の時間割が、時間ごとに別の科目をするのは、理に適っているという話がおもしろかった。

5.すてる

知識は増やすだけではいけない。不要なものはどんどんすてる。すてる作業とは、自分の関心、興味、価値観に合うものを、残す作業。自分の価値観を再確認する作業。知識の整理によって残ったものは、力となる。大切なものが分かれば、次に必要なものも見えてくる。

6.とにかく書いてみる

気軽に書く。力まず、うまく書こうと思わない。書いているうちに、書きたいことがまとまってくる。考えてもいなかったことが、ふと頭に浮かぶ。まずは最後まで書いてみて、終わってから全体を読み返す。その時に、修正すればいい。

一度書いた後、同じ内容について、もう一度最初から書いてみる(第二稿)。第一稿よりも第二稿が良いものになったなら、第三稿を書いてみる。書くことによって、思考の整理が進む。

推敲する時に、音読は有効。
声も、思考の整理に役立つ。

7.人に話す

聴き上手な相手に考えていることを聴いてもらうのも、頭の整理に役立つ。注意すべきは、否定する人に話さないこと。ほめてくれた人のおかげで進歩する。同じように、他の人の良いところも見つけて伝える。いい雰囲気のなかで、アイデアは生まれる。

異業種の人たちと話すのも、とても良い。異質な要素は、新たなアイデアを生み、たくましい知的創造を可能にする。

8.自己暗示

かならず、できる。よく考えれば、いずれは、きっとうまく行く。自分はダメなのではないか、などと思い込まない。できるものさえ、できなくなる。とにかく、できる!と自分に言いきかす。

9.すべてから学ぶ

【知的活動の種類】
 ①既知のことを再認する
 ②未知のことを理解する
 ③まったく新しい世界に挑戦する

すでに知っている知識や経験を、新たな知識と結びつけられた時に「分かった」と思う。だけど、それだけでは、知っている事しか、分からなくなってしまう。とはいえ、知らない事ばかりだと、未知のことを理解できない。

未知を既知にするには。

既知の知識をもとに、想像力を使って、未知のことを理解していく。新しいことを知る為に、知識は必要なのだ。

未知のことを知るために、
既知の知識を使って、理解する。

未知のことを知るために、
新たな知識を学ぶ。

それは、新しい世界への挑戦だ。

読書はもちろん、暮らしの知恵や、ことわざの中にも、大切な知識はある。本に書いてあることだけが知識ではない。

分からないから、知りたい。

それが、知的活動のはじまり。

知的活動は、学校や本のなかだけのものじゃない。暮らしのなかに、いつもある。それを楽しみたい。

10.自分で考える

知的活動によって、自分の中に蓄積した知識や体験が醗酵して、自分の価値観や、自分の言葉になる。

自分の言葉で、伝えたいことを、表現するために。

知的活動は、つづく。

「思考の整理学(外山滋比古:著/筑摩書房/1986年)」

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