ピッチング時の肘の外反ストレスと靭帯損傷のリスク



肘の外反トルクとは?

ピッチング時の肘の外反トルクは肩の最大外旋時において発生していると考えられています1。

このストレスが肘の内側の靭帯の損傷につながっていると考えられています。


肘の外反トルクと肘の故障

実際にプロのピッチャー25名の投球動作を分析したところ、肘を痛めたピッチャーは肘の外反トルクが高い傾向にあったそうです2。

ピッチャーの肘の痛みを減らすためには、このピッチング時の外反トルクを減らすことが役に立つ可能性があるわけです。


肘の外反トルクに影響する要素

ピッチャーの投球動作を解析した研究を要約するとピッチング時の肘の外反トルクへの影響度が大きいのは次のようなものになるかと思います1・3。

  • 肩の最大外旋角度

  • 肩の最大外旋時の肘の角度

  • 前足が地面についた時の肘の高さ

  • その他に腕の振りの勢いなどの色々と細かい要素

さらにピッチングフォームだけでなく、体重も肘の外反ストレスに関係しています4。つまり肉体改造などにより体重が増えることで肘の靭帯への負荷が大きくなる可能性があります。

もちろんトレーニングはパフォーマンスアップのために重要ですので、身体のバランスなどを考慮して適度に行うことが大事かと思います。

しかし、球速が上がるにつれて外反ストレスも大きくなっていきます。

このため外反ストレスが一概に小さければいいというよりも、球速やパフォーマンスに対して過度に負荷がかかっていないかといった相対的な評価が大切になってくるかと思います。


まとめ

色々な要素がありますが肘の靭帯に負荷を与えるメカニズムを理解し、ピッチングフォームの見直しやトレーニングをすることで肘を痛めるリスクを下げることができる可能性があります。


<参考文献>

  1. Aguinaldo AL, Chambers H. Correlation of Throwing Mechanics With Elbow Valgus Load in Adult Baseball Pitchers. The American Journal of Sports Medicine. 2009;37(10):2043-2048.

  2. Anz AW, Bushnell BD, Griffin LP, Noonan TJ, Torry MR, Hawkins RJ. Correlation of Torque and Elbow Injury in Professional Baseball Pitchers. The American Journal of Sports Medicine. 2010;38(7):1368-1374.

  3. Werner SL, Murray TA, Hawkins RJ, Gill TJ. Relationship between throwing mechanics and elbow valgus in professional baseball pitchers. J Shoulder Elbow Surg. 2002;11(2):151-155.

  4. Sabick MB, Torry MR, Lawton RL, Hawkins RJ. Valgus torque in youth baseball pitchers: A biomechanical study.J Shoulder Elbow Surg. 2004;13(3):349-355.