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#50 正月の過ごし方

全国の「トノ、御無体な!」読者の皆様、明けましておめでとうございます。昨年はこのエッセイに対して多くの励まし、諦め、卑しめ、貶め、非難をいただき、お恨み申し上げます。今年こそはそんな辛い現実に負けず、皆様の輝かしい笑顔をなんとか想像できるよう、努力していく所存です。本年もなにとぞ、よろしくお願いいたします。

今、このエッセイをカフェで書いています。「え? 三が日から仕事してるの? さすが、えらすぎっ♡」とお思いの皆様、安心してください。週刊エッセイである本稿の締め切りは月曜日です。本来であれば昨日のうちに更新しなければならないものを、今になって書いている始末です。年始早々からお待たせしてしまっています。
思い返せば昨年も、月曜日更新と言いながら火曜日になり、水曜日になり、最終的に日曜日になった回もございました。このあたりは昨今の世界情勢とリンクしてしまっています。未曾有の円安と戦争、”広沢タダシエッセイの読者数の伸び” など、何が起こるか分からない世の中なのです。どうぞ憂いていただけますように。

元来私は正月の雰囲気が好きではありませんでした。行きたいカフェも、スタジオも空いていないし、友達も遊んでくれない(それは普段からやろ。っていうか友達おらんのちゃうか)。テレビはだいたい同じ内容だし、なんだか世の中がゆるんでしまっている気がする。でもマラソンやサッカーを頑張る人たちを見て、俺は何をしているんだと自己嫌悪に陥り、どこにも行けないのに、何かに集中できるような雰囲気でもなくて、悶々としたものでした。
ところが今となっては正月も悪くないと思えます。大きなショッピングモールに行けば元旦からカフェには入れるし、歌いたいなら家のスタジオで歌えばいい。テレビもなんだか楽しいものが増えた気がするし、気に入らないならネットで何か見ればいい。世の中がゆるんでいるというのは実は悪いことばかりではなくて、なんだか空気が澄んでいる気がするのはそのせいではないかとも思う。前向きで力強いエネルギーも無い代わりに、様々なネガティブなエネルギーもない。正月の空気って、どこか田舎に来たかのように気持ちがいいことに気がついたのです。深呼吸をして猫を撫でる。それだけでいい。
私のような独身男には親戚の集まりというのはほぼ皆無で、会うとしたら父親ぐらい。決められた予定はないので何時に起きようと関係ない。正月とはなんとも気楽な時間なのです。「あぁこれが正月気分か」と、今になってそれを味わっているのです。

だから私はこうして正月も三日からエッセイを書いています。なんだか気分が悪い時、悲しい時、人を妬む時に読んでください。文章のあまりのつまらなさに、そのネガティブな感情がどうでもいいものに思えてくるはずです。だって、内容がないのですから。これを読んで世界が平和になるとか、円が高くなるといったことは起こらないのです。ただ、広沢タダシ本人が少しほくそ笑む、それだけの内容なのです。仮に、もしも読んで気分が悪くなった場合は、そのネガティブな感情をエッセイにぶつけてください(ただし決してどこかに書き込んだりしないでください)。そうすれば世の中の空気は更に澄んだものになるはずです。「なんで最近そんなに晴れやかなんですか」と聞かれた時には、「広沢タダシのエッセイを読んでいるからです」と言ってください。それは本当のことですから。

今年も残念ながらエッセイは続いていきます。早く終われないものかと願うけれど、自分が「終わります」と言わない限り終われないことが残念です。変わらず全力の愛と屁理屈で毎週書いて参ります。引き続きよろしくお願いします。皆様、今年こそ、しっかりしてください。

2023年1月3日 広沢タダシ

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