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断髪式のお役目と、親方とのトークショー

先日、力士・嘉風の引退と中村襲名の舞台にお招きいただき、断髪式でハサミを入れる役目を預かった。
これまで相撲を見に行くことはあったが、断髪は初めての経験で、非常に身が引き締まる思いだった。

彼とはアポロプロジェクトで出会ったのだが、真っ直ぐに自分の気持ちを伝えてくれる姿に感銘を受けていた。一度話をすると本当にファンになるような愛くるしい男である。

「嘉風引退中村襲名披露」の当日、コロナ禍にも関わらず両国国技館には多くのファンが駆けつけていた。あらためて彼の人気を実感し、引退してもファンの心を惹きつけていることがすごいなーと思った。

彼自身は、今日、大銀杏がなくなる。どんな気持ちでいるのだろう。自分なんかが切ってしまって良いのだろうか、という思いもよぎった。

しかしあっという間に、その時がきた。
まず、初めて上がらせてもらった土俵に、興奮した。
そしていよいよハサミをいれる。
僕は左利きなので、ちょっと不安になって左手で切っても良いか確認をした。
その後、ちょいと震える手で、チョキっと切らせてもらった。

彼の大事な門出。その瞬間を共有させてもらった。
これからも彼を応援していこうという気持ちが沸いた。

尾車親方が丁寧に大銀杏を取り、断髪式は終了。嘉風は支度部屋に戻っていった。

その合間に、幕内力士の土俵入りが行われていた。
断髪式の前には相撲甚句や初切と呼ばれる笑いを取るような演出もあり、「嘉風引退中村襲名披露」の1日にはファンを楽しませるエンタメ要素がたくさんあった。

その後、髪を切って整えた元嘉風、こと中村親方が再度登壇した。
スーツ姿の好青年であった。

その様子は紛れもなく晴れ舞台だった。

断髪式というお別れの瞬間と、新たな門出のお祝いの瞬間を共有させていただいた。この時間はかけがえのないものだなと感じた。

断髪式の後、慣例では、お世話になった方々とお酒や食事を共にするのだそうだが、コロナ禍では難しい。中村親方は、その代わりに、来てくださったお客さんに喜んでもらいたいと考え、前代未聞、土俵上のトークショーを企画していた。

トークショーのテーマは「楽しい」について。
中村親方、二所ノ関親方、僕、の3人でのクロストークだった。
中村親方は試合は楽しかったが、稽古は楽しくなかったと言っていたが、二所ノ関親方はなんと稽古が楽しかったと言っていた。強者のメンタルを持った人間だと感じた。ハードワークを厭わない、豪快な男に見えた。

このトークショーでも中村親方の人柄が垣間見られた。全力でぶつかる潔さや、「自分はここが足りなかったからあかんかったんだ、ここから学んでいこう」と学んだ経験談を幾度も話してくれた。成功した男が皆の前で失敗を認めて、頑張ります!と言える。これこそ彼の魅力だなと改めて感じた。

僕たち3人には共通点があった。それは"学び直し"である。
アスリートを引退し、今後人生にどんな旗を立てていくのか、学びながら形作っていた。

中村親方と二所ノ関親方は素晴らしいなと思った。学んでアクションして、学んで、より良くする。良いループに入っているはずだ。常に変化し向上する思考があれば、客観的な視点を持つことができ、新たな発想へのヒントも得られる。この日国技館に来られた方にも良い刺激があったと思う。

トークの終盤、ラグビーと相撲が一緒にお互いのスポーツを盛り上げていこうという話も出てきた。地方都市を盛り上げたいという話もあった。コラボレーションでどんなことができるか、まずはそのための作戦会議を実施したいと思う。

相撲の歴史と精神を学び、相撲に魅せられた1日だった。
土俵という神聖な場所で、裸一貫での真剣勝負。
塩を撒き、その場を整えて戦う。
そこには、ラグビーとはまた違う日本らしい美しさがあるように感じた。
















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