我流独学

沖縄と韓国を中心に、世界の歴史と人間について学ぶ独学者です。 「しなやかに、味わい深く…

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沖縄と韓国を中心に、世界の歴史と人間について学ぶ独学者です。 「しなやかに、味わい深く生きたい」と願い、学びつつ酒とフットボールと音楽を愛する日々を送っています。 よろしくお願いします。

最近の記事

瀬尾まいこ「夜明けのすべて」を読んだ

 映画化もされた話題の小説を読んでみた。  主人公①の美沙は、重いPMS(月経前症候群)に苦しんでいる。特に「感情を抑えられない」症状は、周りの人を巻き込み、美紗の生きづらさを増幅する。  もう一人の主人公、山添君。ある日突然パニック障害になり、生きる気力を失っている。それまで「普通」にできていた行為ーー電車に乗り、会社に通い、外食を楽しむなどのことが、突然できなくなってしまったのだ。  医学的な病名・症状は異なれど、外見的には事情が分かりにくく、内なる生きづらさと孤独を

    • ひろがる「日韓」のモヤモヤとわたしたち(感想)

      書名 ひろがる「日韓」のモヤモヤとわたしたち 監修 加藤 圭木 編集 朝倉希実加、 李相眞、 牛木未来、沖田まい、熊野功英 出版 大月書店 価格 1,980円(税込)  若者たちは、一体何にモヤモヤしているのか?  たいへん興味をひくタイトル。というか、このタイトルがすでに秀逸。  本書には前作があります。「『日韓』のモヤモヤと大学生のわたし」(2021年・大月書店)。監修者・加藤圭木教授(一橋大学)のゼミ生たちが、みずから感じたモヤモヤを語り合った前作は、日韓の

      • 岸政彦「にがにが日記」を読んで

         文章を読むのも書くのも好きな方だと思うが、なぜか「日記」というものを書いた記憶はない。10代後半、当時バンドをやっていて、生意気にも曲も詩も書いていた。その時に作詞のネタ帳的なノートを付けていたことはある。が、それはほとんど散文詩みたいなもの。まぁ今となっては読み返してみたいが、どこにあるのかもう分からない。 ということで、私の尊敬する社会学者であり、作家である岸政彦さんの「日記」である。  一読して思うのは、やはり最後の「おはぎ日記」の圧倒的なリアリティだ。  「家族を

        • 「密航のち洗濯 ときどき作家」書評

          ◆書名 密航のち洗濯 ときどき作家 ◆文 宋恵媛・望月優大 写真 田川基成 ◆販売 柏書房 1800円(+税)  終戦から間もない1946年夏、朝鮮から日本へ「密航」した男性と、日本で裕福な家庭に育ちながら、その男性と生きることを選んだ女性が築いた家族の物語です。 貧しい夫婦が生きるために選んだ稼業は洗濯屋。しかし男性は早くに亡くなり、残された女性と朝鮮人として生まれた三人の子どもたちは、差別や偏見と対峙しつつ、それぞれの人生を歩みます。  歴史の表舞台に出てこなかった家族

        瀬尾まいこ「夜明けのすべて」を読んだ

          MONGOL800 ライブ初参加のご報告 地元川崎でモンパチに会ったのだ

          MONGOL800 25th LAST PARADISE TOUR 2023-2024 inカルッツ川崎(24/1/8)参加報告 「沖縄フリーク」(嫌な言葉)として、ずっと密かに聞いてきたMONGOL800(モンパチ)。しかし残念ながら今までライブに行く機会はなかった。とくに2019年にオリジナルメンバーの儀間さん(ギター)が脱退してしまったことで、勝手な喪失感で「もうあのモンパチは見れないんだ…」などの妄想にとらわれていた。 しかし今回、結成25年を冠したツアーチケット

          MONGOL800 ライブ初参加のご報告 地元川崎でモンパチに会ったのだ

          それは丘の上から始まった 1923年横浜の朝鮮人・中国人虐殺 書評

          ◆著者  後藤 周 ◆販売 「ころから」1800円(+税)  関東大震災から100年、震災を機に発生した朝鮮人・中国人虐殺について丹念に取材し、残された資料を基に、事実を明らかにした著作。  積み上げられた事実は衝撃的。  「朝鮮人殺害さしつかえなし」の流言(デマ)のもとに行われた殺戮の実態は「これが本当に起きたことか」と、にわかには信じられない、非人間的なものだ。  事態の根底に「朝鮮人・中国人差別」があったことを、正面から受け止めなければいけない。なぜなら不条理な「外

          それは丘の上から始まった 1923年横浜の朝鮮人・中国人虐殺 書評

          <書評>戦後沖縄の政治と社会――「保守」と「革新」の歴史的位相

          ◆編著 平良好利/高江洲昌哉     小濱武/秋山道宏/小松寛/川手摂/櫻澤誠 ◆出版 吉田書店 ◆価格 2,700円+税(2,970円)  復帰50年を期して編まれた論考集。専門分野それぞれ異なり、政治学、経済学、社会学、行政学、歴史学など。共通しているのは、戦後沖縄のアメリカ統治時代を研究課題としていること。そうしたメンバーによって、新たな戦後沖縄史の研究と議論を深めるための、基礎的な研究成果を学ぶことができるのが、本書の魅力である。 《第1章 反共社会の形成と反米政

          <書評>戦後沖縄の政治と社会――「保守」と「革新」の歴史的位相

          坂本菜の花「菜の花の沖縄日記」書評

          ◆書名 菜の花の沖縄日記 ◆著者 坂本 菜の花 ◆販売 図書出版ヘウレーカ 1600円+税  「普天間基地の危険除去は辺野古移設が唯一の解決策」―。 こんなにも貧しい言葉しかもたない政権が、この国の政治を担う現実が続いている。沖縄がおかれている状況に心を寄せるとはどういうことか。 本書は、多感な高校生が感じた思いを通じて、そのことを問いかける「日記」だ。  舞台は沖縄県那覇市のフリースクール「珊瑚舎スコーレ」。  「日記」が書かれた2015年から2018年は、翁長雄志・前

          坂本菜の花「菜の花の沖縄日記」書評

          上間陽子「海をあげる」書評

          ◆書名 海をあげる ◆著者 上間陽子 ◆販売 筑摩書房 1,600円+税  タイトル「海をあげる」の意味は、最後の一行を読むことで分かる。  私の「その時」は、地下鉄車内だったが、その言葉の重み、自分の無力さ、そして何やら分からない感情があふれ、けっこうな人がいるなかで、泣いてしまった。  前著「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」の著者が日常と生活を描くエッセイ集。  著者・上間陽子さんは1972年、沖縄「本土復帰」生まれ。実は私と同年生まれだ(「だからどうした」と言

          上間陽子「海をあげる」書評

          古波藏契             「ポスト島ぐるみ」の沖縄戦後史 感想

          ◆書名 ポスト島ぐるみの沖縄戦後史 ◆著者 古波藏契(こはぐら・けい) ◆出版 有志舎 ◆価格 2,800円(税別)  「ポスト島ぐるみ」をテーマに、沖縄出身の若き研究者が、沖縄戦後史の解明に挑む意欲作。  本書にとりかかる前提として、「島ぐるみ」とは何のことかを抑えておく。「島ぐるみ」とは「島ぐるみ闘争」、つまり1950年代の後半、沖縄の各地で沸き起こった「島ぐるみ土地闘争」のこと。  当時沖縄を統治支配していた米国民政府(USCAR=ユースカー)による、一方的で暴力的

          古波藏契             「ポスト島ぐるみ」の沖縄戦後史 感想