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🎵ポリス「見つめていたい」

🎼「初恋」

 卒業式が終わったあと、僕は校門の前で、彼女と写真を撮った。風が強い日だった。卒業証書の入った黒い筒を抱きしめた彼女の髪が風に靡いている。僕はその隣で左手に黒い筒を無造作に握り、右手でピースサインをしていた。

 進むべき道は決まっていて、迷いという感情とは無縁だった。敷かれたレールの上をただ真っ直ぐ進んで行けばよかった。自由を犠牲にして安心を手に入れていた。大人になるということがまだ遠い未来のように思えた。

 その日、彼女と何を話したのか、そのあと、僕達は一緒に帰ったのか、すっかり忘れてしまった。でも、勉強部屋でFMラジオからポリスの「見つめていたい」が流れていたことは鮮明に記憶している。

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