たこ焼きの屋台が出とってね、若か兄ちゃんがたこ焼きば作りよらしたもん。

いつのまにかそれば見に人が集まってきたったいね。近頃はたこ焼きの屋台もめったに出とらんけん、珍しかったんかな。そこら中にソースのよかニオイがプンプンしとったばい。

そろそろたこ焼きができるかなって頃になってね、兄ちゃんがたこ焼きばピックでくるくるとひっくり返していきよったったい。したら、たこ焼きがひとつ宙に浮かんでヒュッと見よらした人達の方に飛んでいったとよ。

女子高生の目の前に飛んできたばってん、いやーっ！！と叫んで間一髪でよけたもん。そしたらそこにスキンヘッドのおじさんが出てきてかったい、にゅーっと腕ば伸ばしてピースサインの指二本でたこ焼きばキャッチしてね、「いつもごちそうさま！」て言うて、たこ焼きばパクッと食べておらんごつなった。
みんなで「いつもなの？」という顔で屋台の兄ちゃんば見たばってん、屋台の兄ちゃんはブンブンと首を横に振りよらした。かわいそかったばい。
ばってん、その日の屋台のたこ焼きは売り切れてしもたてたい。よかったろ。