見てきたような嘘かもしれないよ「無垢の祈り」

クリスマスを目前に控えてどこもかしこもキラキラ輝いている吉祥寺で、純度100%の絶望を描いた映画「無垢の祈り」5年ぶりに見てきました。

冒頭、重低音のMが流れるなかの工場の夜景からもう不穏さがぐいぐいこちらに向かってきまして、そっからほぼ全編不穏さと禍々しさと暴力と理不尽がこれでもか、とたたみかけてきますが、主人公のフミが自転車で走るシーンと訪れた殺人現場で刑事と話す(といっても刑事がほぼ一方的にしゃべる)シーンでかろうじて水面に顔を出して息を吸い込める、という感じです。

物語は直線的ではなく、ところどころ「おや?」となるところがあるかもしれませんが、それは周到に仕掛けられたもので、ポイントは「眼帯」だと思います(下校時、路地を歩くフミのエピソードが、映画を最後まで見ると絶望をより深くします)。原作との大きな違いのひとつに描いている時間の長さ、もあるかもしれません。

5年ぶりに見て、ラストのフミの叫びに胸を抉られるような気持ちになったのは前回と同じですが、刑事とのシーンでその場を走り去るフミの姿に、涙が出そうになったのでした。

今後どのくらいの頻度で上映されるかはわかりませんが、もしお近くで上映することがあったら、ぜひ見ていただきたい映画です。

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