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二ッポイタリアーノ その2

ここだけの話ですが、日本語とイタリア語は発音が似ています。別にここ以外で話してもらっても一向にかまわないで、大きな声で日本語とイタリア語は発音が似ていることを宣言できるかもしれませんね。そんな移り気な気分にさせるのがイタリアの魔力とでも思ってください。もちろん最初はなれない発音もあるかもしれないけれど、基本的にカタカナ表記で練習できる読みがほとんどなので、アクセントのコツさえ覚えれば意外と通じると思います。初心者の人でも。

つまり、英語や中国語、フランス語の発音で外国語に挫折した経験がある人でも、実際に通じるイタリア語が話せるようになるのは思いの外早いんじゃないのかと思います。ホントに勉強すればの話ですが。

ここで紹介するのは、その意外と日本人向きなイタリア語ではなく、更にその入門編的な二ッポイタリアーノです。ちょっとだけイタリア語の単語を日本語の中に混ぜて使用し、専門家筋で「二ッポイタリアーノ」、研究家筋では「なんちゃってイタリア語」と呼ばれる現代語講座。前回からの続きなので、今回も使用例の列記という形式で進めたいと思います。

イタリアでの挨拶に欠かせない「チャオ!」も便利な二ッポイタリアーノになります。ここでのポイントは、「こんにちは」の場合が「チャオ!」と1度だけで、別れ際の「じゃあ、またね」とか「バイバイ」が「チャオ、チャオ」と2度繰り返すところ。つまり、同じ言葉で出会いも別れも利用できる優れものなんです。アイスクリームの棒が飴になっていたりする、1つで2度楽しめる商品がありますが、そういうお買い得カテゴリーだと思ってください。言語学的には、ネアンデルタール人が使っていたという「フンガ」と「フンガ、フンガ」に近いという説もあります。

1度で2度楽しめると言えば、日本人デザイナーとして世界的に最も評価され、今でも歴代デザイナーの巨匠史などで必ず名前が上がる倉俣史郎という人がいました。80年代にミラノのメンフィスというグループの作品展に磯崎新、梅田正則達と一緒に参加していました。この人がミラノのリストランテで魚のオーブン焼きを食べているとき。最初はイタリア風に、オリーヴオイルと塩で味付けされた魚を味わい。半分食べたところで(お店の人に見えないように)ポケットから醤油の小瓶を取り出し、ぴゅっと魚にかけたそうです。同席に人が驚くと「これで同じ魚も味が変わって、1度で2度楽しめる」と言ってたそうです。

話をチャオに戻して、実際は別れ際も「チャオ!」が1度だけでもOKですが、特に電話でのお別れの言葉に「チャオ、チャオ、チャオ」と2度ならず、3度、4度と繰り返す人が多いのです。別れの際には「チャオ!」の叩き売りをしましょう。

動詞ではなく形容詞なので、比較的使用難度が低い表現に「トロッポ」というのがあります。「多過ぎ」とか「辛過ぎ」とかの「過ぎ」を表します。「ちょっと最近お腹がトロッポになってきたので、ジムに通うことにしたよ」とか「この前のレストランは美味しかったけれど、塩がちょっとトロッポだったかなあ」みたいに使います。直接的な言い回しを避けたいときに使えるかも。動詞的な使い方で「トロッポらないようにしなくちゃ」という人が時々いますが、多少トロッポな印象を与えるため、そういう時は前回の「エサジェらないようにしなくちゃ」という言い回しの方がスマートです。

イタリア名物のショーペロとは、ストをすることを意味します。つまり英語のストライキなんですが、日本では「○○が24時間ストに突入」なんてニュースはすっかり時代遅れな感じなので、よほどのことがなければストに遭遇することはないんじゃないのかと思うけれど、イタリアでは日常茶飯事です。
動詞としてのショペるは、「今日という今日はあの上司の発言が頭に来たから、明日から2日間ショペっちゃうもんね」とか「タクシーがショペっちゃってて、空港からここまで電車で40分もかかったよ」と使用します。実際にイタリア旅行中にショーペロに遭遇する確立は高いので、この言葉も覚えておくと、なぜ地下鉄が動いていないのか、なぜ飛行機がキャンセルになってしまったのか、悩まなくてすむかもしれませんよ。

さて、イタリアと言えばピザたパスタと料理がおいしいことで有名です。国際的なサイトで「料理がおいしい国ランキング」のようなものがあれば、大体1位にランキングされますが、仮に他の国へ1位の座を譲ったサイトがあったとしても必ずベスト3には入っているようです。何しろBuonissimoな国なのです。このブオニッシモという表現は、美味しいのBuonoを最上級にしています。ッシモの部分が最上級への架け橋です。これをニッポイタリアーノに応用すると、「この料理おいしッシモ」と表現できます。最上級にカッコいいことは「カッコイッシモ」最上級にかわいいことは「かわいッシマ」となります。そう、男性にカッコいいというイタリア語はBellissimoで、女性にきれいいう時はBellissimaと語尾が変わるのです。男性名詞はOで終わり、女性名詞はAで終わるイタリア語のルールがニッポイタリアーノでも採用し、かわいい女性にはかわいッシマ、美しい女性にはきれいッシマ、または美しッシマと表現します。「めちゃくちゃ上手いね」という時は、対象が男性ならうまいッシモ、女性ならうまいッシマとなります。上記のように、対象が料理の場合は男性系女性系を気にしないで常に「おいしッシモ」でOKです。

さて今回はここまで、チャオ、チャオ、チャオ、チャオ。

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