隠れたIT大国 ウクライナの実像に迫る!中編

ウクライナのテクノロジー
今回はウクライナに住んでいて目にした日本と比べここは進んでいるというIT関連技術を紹介します。日本は世界から技術大国という目で見られていますが、個人的に東京に10年以上住んだ経験から言ってもIT大国とは程遠いアナログ重視の社会だなという風に思います。それは文化全般、現金志向、効率性を後回しにした企業内の根性論などとも関連しています。

キャッシュレス社会
ウクライナではほとんどのモール、店舗、レストラン、はたまた公共交通機関などでもGooglePayやApplePayを使用できます。(個人商店やマーケットは除きます)現金で支払うことも日本に比べて少ない印象です。クレジットカードよりデビットカードでいつでもどこでも決済が可能です。いわばキャッシュレス社会を目指しているわけですがこれはウクライナに来た当初かなり衝撃でした。日本がいかにキャッシュ、現金志向かと思い知らされました。日本では未だに現金のみ、クレジットカード払いは受け付けないという場面が多い印象です。筆者も某巨大ファミレスチェーンでカード払いを断られ、かつたまたま持ち合わせの現金がなく、身分証明書を置いてATMまで走った経験が何回かあります。だいたい巨大チェーン店で現金払いのみというのがあり得ないと思いました。ちなみにレストランの多くはロイヤルティプログラムそしてモバイルアプリで支払いの度にポイントを貯められます。日本のようにメンバーシップカードを作って次回来店時にはカードを忘れ、ポイントを貯められない、使えないと言った不条理はウクライナではまず生じません。


配車アプリのすごさ
ウクライナではタクシーが激安です。ウクライナ版UberのUklonをはじめ、Uber、エストニアのスタートアップでウクライナのUklonをモデルにしたというTaxifyなどまさに配車アプリ戦国時代と化しています。ウクライナ版UberのUklonの配車アルゴリズムは驚異的なもので例えばイベントなどによる混雑発生時にタクシーが見つからないといった場合Bidding(いわゆるオークション制)で料金を見つかるまで上げていくというようなロジックも組み込まれています。これは知り合いのITプロダクトカンパニーが開発を請け負っており、詳しく説明してくれました。筆者のウクライナ人嫁の話によると旧ソ連時代のぼったくり白タク時代と比べたらレビュー制のおかげでサービスの質は地獄から天国へと変わったそうです。レビューが一定基準以下のドライバーは契約をストップされるためです。ちなみに初乗りは200円ぐらいからスタートです。(安っ‼!)

ウクライナでは都市間の移動はBlaBlaCarという相乗り(カーシェアリング)アプリが便利です。鉄道やバスもありますが高速道路(高速料金なく無料です)をかっ飛ばしていきますので断然早く安価です。キエフから妻の実家のウクライナ西部の町リヴネまで2.5時間ぐらいで到着してしまいます。(電車やバスだと5時間・・・)料金は1000円ぐらいです。日本で東京から実家のある愛知県(距離的には同じほど)に帰省するたびに新幹線に片道8000円ほど払っていた筆者にとってはまさにその安さに目から鱗です。これは日本でも規制緩和して導入してもらいたいものです。特にBlaBlaCarは北海道、沖縄などの高速鉄道が整備されていない地方では非常に便利ではないでしょうか?ちなみにウクライナの知人のITプロダクトカンパニーはライドシェアの運送バス版アプリなども開発、ウクライナ中の運送会社に提供しており、例えば商品配送済みで配送元へ戻る空トラックの数を減らすためにも活用されています。日本の法制度はAirbnb登録制にもみられる通り時代と逆行しており、世界の趨勢から取り残されています。


日本もぜひ導入してほしい「ターミナル」
前回少し触れましたが、ぜひ日本でもあったらいいなと思う技術のひとつとしてまず思い浮かぶのがウクライナのそこら中にあるターミナルという超便利な支払い端末です。この端末はタッチスクリーン式のATMのようなマシンなのですが、なんと公共料金、携帯料金、ホームインターネットの料金、ケーブルTVの料金、イベントのチケット購入、その他もろもろの支払いがすべて同じ端末でできてしまうのです。もちろんマシンなので年中無休です。日本ではコンビニで同様のことができますがレジで人の手を介してなのでそのたびにレジが混み合い、支払い用紙にスタンプ押して半券を返してなど気の遠くなるような無駄な作業を見るたびに目がくらくらしてしまいます。技術大国の日本がなぜこんな無駄な手作業をコンビニの店員に強いているのか理解に苦しみます。お年寄りで機械に詳しくない方もいると言われそうですがコンピュータのコの字も知らないようなウクライナのバブシュカ(お婆ちゃんの意)ですら使いこなせているターミナルですから要は慣れなんです。人が対応したほうが温かみのあるサービスと言う方もいるかもしれませんが筆者に言わせたら無駄な人件費を使うぐらいならすべて機械化して料金を下げろ、と言いたくなります。ちなみにウクライナの携帯料金、固定インターネット料金は激安です(両方合わせて月1000円以下)。

無数のWifi

街中のそこら中に飛んでいるWifiも前回も触れましたがここで述べるまでもなく日本より多く、日本で常に持ち歩いていたPC用の携帯モバイルルーターもこちらでは全く必要性を感じません。PC経由でネットアクセスしたかったらそこらのカフェに駆け込めばいいからです。日本の某コンビニのWifiのように利用時間が30分制限とか思わずしばきたくなる制約も一切ありません。

ウクライナの銀行
あとこれは欧米の他の諸国にも共通していることなのですがウクライナは銀行に人が少ない、そもそも客は銀行に行かずATMとオンラインバンキングですべてを完結する客が多いです。日本で銀行に行くと間髪入れず制服を着た銀行員が2~3人ほどわらわら寄ってきます。「本日はどのようなご用件ですか?」「お引き出しですか、ではこちらのマシンのここを押して番号札を持ってお待ちください」うーーん。この人たちはこの単純作業で月々いくら貰っているのだろうと勘繰りたくなります。どの銀行の店舗にも謎のおじさんがいて一日中「いらっしゃいませ!」「ありがとうございました!」と繰り返しています。相当の激務ですね。(すいません皮肉です)知り合いのウクライナのAI専門のITプロダクトカンパニーは監視カメラを通しての銀行用の自動不審者検知AIシステムを開発、提供しています。顔認識、行動認識もばっちりでこれを使えばセキュリティの向上にもつながることでしょう。日本で同様のシステムを採用している銀行は筆者の知る限り皆無です。(既にあったらすみません)

電子政府
最後に超意外だったのが、政府システムの電子化についてです。ウクライナでは旧ソ連式の古臭いお役所システムが残っていると思っていたのですが、ウクライナでの会社登録、個人事業主登録はすべてオンラインで電子管理されており、オンラインにて詳細が閲覧可能です。会社、個人事業がきちんと登録されているか、信頼性があるのかは第三者、見込み顧客が登録番号を入力することでオンラインにて一目で確認可能です。これは知り合いのIT会社社長の話によるとエストニアからコンサルタントを呼びよせて作ったシステムとのことです。日本の紙だらけのお役所よりよっぽど電子化が進んでいるといえる一つの事例でしょう。

日本の無駄の象徴
様々な意見があると思いますが筆者が一番無駄だと思うのが印鑑と印鑑証明です。これが日本文化(厳密には東アジア文化)だ、と言われる方もいらっしゃると思いますが高級印鑑を作るのにアフリカの象さんの殺戮の一助をしてると知ったらどうでしょうか?サインでいいだろ、と言いたくなります。皮肉なことに印鑑の発祥地中国では日本よりサイン文化が普及しています(笑)。印鑑を家に忘れ、近くの印鑑屋で印鑑を購入し、登録済み印鑑から新しい印鑑に変更手続きをし、(以下略)・・・。なんて無駄なんだと泣きたくなります。極論ですが印鑑屋さんの皆さんごめんなさい。新しいビジネスモデル見つけてさっさと業種変換してください。

日本は危機感を持て!!
というわけでウクライナの技術が如何に日本に比べ進んでいるかがウクライナに住んでいる筆者が日常的に目にする範囲でも頻繁に目につくことがお判りになったかと思います。日本が技術大国として知られていたのも今は昔。世界中のIT産業から取り残され、家電業界も中韓企業にボロ負け。残るは自動車産業ですがこれも欧米、中韓のメーカーは自動運転、AI、IoT、電気自動車化をものすごい勢いで進めているので陥落も時間の問題です。日本全体がIT投資を早急の課題として考え意識変革をしないとこの傾向はさらに続き、日本は欧米、中韓巨大ITコングロマリットの下請け国に成り下がると断言します。日本企業の皆さん、早くウクライナに進出しないと手遅れになりますよ(割と本気)。

今回は炎上覚悟でいろいろ厳しいことをつれづれ書いてみました。皆様のコメントお待ちしています!以上、ウクライナのキエフからのリポートでした。

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