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メンバーの才能を開花させるリーダーシップとは③(「解放者」としての技法)

前回までは、メンバーの能力を最大限引き出すリーダーの特徴と、人材を惹きつけその才能を最大限に発揮させるためには、ということを書きました。

リーダーシップに関してはこの本がすごく分かりやすかったので、こちらを参考にしております。

ちなみに、私にとっての理想のリーダーの1人がワクセル主宰の嶋村吉洋さんです。

増幅型リーダーの5つの習慣
①才能のマグネット:人材を惹きつけ、その才能を最大限に発揮させる
②解放者:最高のアイデアを求める
③挑戦者:難しい課題に挑戦させる
④議論の推進者:議論を通して決定する
⑤投資家:責任を明確にする

今回はその中でも、「解放者:最高のアイデアを求める」について書いていきます。

●「解放者」としての技法

永遠に重要でありつづけるただひとつの自由、それは知性の自由、すなわち観察と判断の自由である。

ジョン・デューイ(アメリカの哲学者)

リーダーの仕事はメンバーを舞台に上げることです。
そのためには、自分がメンバーの仕事に割り込んで仕事を片付けるのではなく、ほとんど口を挟まずメンバーの自由意思に任せた方が活き活きと活躍してくれたりします。

学習意欲の高い人材を採用するとともに、失敗を許容するのも大事です。
そうすることにより、学びやすい空気感ができあがります。

一般に、有能で熱意があるリーダーほど、自分の理想がある分独裁者になりやすかったりします。
実際独裁者になる方が簡単だったりします。
リーダーは自分が思っているよりも、メンバーから見ると権力を持っているように見えます。
ゆえに、自分の何気ない一言で独裁者になったりもするので、メンバーの考えを尊重することが、増幅型リーダーになるためには大事なのです。

●あなたは「独裁者」か「解放者」か

増幅型リーダーはメンバーの知識や能力が解放されるような緊張感のある空気を作り出します。
一方、消耗型リーダーはメンバーの知識や能力が抑え込まれる威圧的な空気を作り出します。

・威圧感のあるリーダーの例

威圧感のあるリーダーは怒りや恐怖によってメンバーをコントロールしようとします。
脅しによりメンバーにプレッシャーをかけ、アイディアを引き出し、仕事をさせようとしますが、それにより素晴らしい成果が生み出されることはありません。

・緊張感のあるリーダーの例

緊張感のある空気感を作り出すためには、まずは誰に対しても対等に接するのが大事です。
相手をリラックスさせ、みんなの意見に耳を傾けることで、メンバーはリーダーに隠し事もしなくなります。

失敗を発見した時も、それを取り上げて怒るのではなく、それを学習の機会と捉えてメンバーと一緒に解決に向けて動きます。

こうしたリーダーは危機に陥った時も、落ち着いて取り乱したりはしません。
自分に関心を払うより、メンバーに関心を持ち、一人一人から最高の仕事を引き出すことにエネルギーを集中させます。

●「解放者」とは?

解放者はいいことが起きる環境を作り出します。
それは下記のような環境です。
・アイデアが生まれやすい
・全員が素早く学習し、新しい環境に適応する
・みんなが協力して働いている
・複雑な問題に取り組み、解決できる
・難しい仕事をやり遂げられる

・「居心地のよさ」と「プレッシャー」を共存させる

解放者は居心地の良さとプレッシャーを共存させます。
同時に失敗も許容します。
失敗を許容する代わりに、同じミスを繰り返さないように伝えるのです。
ただしプレッシャーを感じさせてもストレスを与えるのではないのです。
では増幅型リーダーが実践していることについて書いていきます。

●解放者の3つの実践

増幅型リーダーは、居場所を作り、最高の仕事を求め、素早い学習のサイクルを生み出しています。

①居場所を作る

増幅型リーダーはメンバーの居場所、つまり貢献できる場所を作ります。
その方法は次の通りです。

メンバーを前面に押し出す
メンバーが貢献できる場所を作ると同時に、リーダーはその仕事を横取りしないことが大事になってきます。
会議などでも自分の意見を押し通すのではなく、メンバーがどういう考えを持っているかに耳を傾け、自分の存在がチームで最も役に立つタイミングでのみ前に出ることが大事です。

「話す」よりも「聞く」
解放者は聞き上手です。
彼らは熱心に周囲の声に耳を傾けます。
忙しくても、メンバーとの1:1のコミュニケーションの場ではいつも100%の力を注ぎ、ものすごく深く聞くことに徹します。
解放者が聞くことに費やす時間は全体の半分どころではなく、ほとんどの時間を聞くことに費やしています。

一貫した行動をとる
リーダーが一貫した行動や習慣があるとメンバーは非常に働きやすくなります。
一貫した行動によって、メンバーは行動が予測しやすくなるので自分がいつ貢献できるかが分かりやすくなります。
また、リーダーが次に何をするかが分かるとメンバーの居心地が良くなり安心感を生みます。

チャンスを平等に与える
一般的な組織体では、古参者の意見が尊重されたり、権力がある人の意見が通ることが多いものですが、増幅型リーダーは立場の弱い人のアイデアや意見も拾い上げ後押しします。
派閥を作らず、一線横並びでチャレンジできる場を作るのが大事です。

②最高の仕事を求める

増幅型リーダーはメンバーに、最高の仕事をしているかを尋ね、それを求めます。

高い基準を守る
増幅型リーダーはメンバーにベストを尽くしているかを聞き続けることで、メンバーに限界を超える機会を与えています。
メンバーから100%以上の力が引き出せる理由はここにあります。

「結果」よりも「最高の仕事」を求める
最高の仕事を求めることと、結果にこだわることは違います。
人はコントロールの及ばない結果を期待されるとストレスになりますが、自分のベストを求められると前向きなプレッシャーになります。
増幅型リーダーは、ベストを求めることでメンバーに前向きなプレッシャーを与えていきます。

③素早い学びのサイクルを生み出す

増幅型リーダーになるには、頭の良さではなく、学ぼうとする意欲の方が大切です。

失敗を認め、共有する
リーダーが過去の失敗談を多く話せば話すほど、メンバーには失敗を許容する空気感が伝わり、リスクを取りチャレンジするようになります。

失敗から学び続ける
増幅型リーダーは、周囲のフィードバックを真摯に受け取り、そこからとことん学びます。
そして本心から、自分がまた同じ間違いを犯したら教えてもらうようお願いをします。
独裁者は失敗した人を叩こう、自分が失敗したら隠そうとする一方で、解放者は失敗をオープンにしてできるだけ失敗から学ぼうとしています。

●消耗型リーダーは環境作りができない

消耗型リーダーの特徴は、自分のアイディアを押し付け、メンバーの意見にほとんど関心を示さないことです。
自分の意見と異なるアイデアをメンバーが出してきたら、感情的に反発してつぶすのでメンバーは不安を抱えて働くことになります。

場を支配する
消耗型リーダーは会議の際、場を支配し、他の意見を抹殺します。
そこにはメンバーの居場所はありません。

不安を生み出す
消耗型リーダーの特徴は、突然怒りを爆発させることです。
気分がコロコロ変わると、メンバーは次にリーダーはどんな感情になるのかが不安になり、自分の能力が発揮できなくなります。

独断する
消耗型リーダーの元で働くメンバーは、独裁者が賛成しそうなアイデアばかり出してくるようになります。
自分のアイデアが批判されたり、標的にされたりしないように、安全圏で仕事をするようになるのです。

消耗型リーダーは100%の賃金を払いながら、50%以下の能力しか引き出せないので非常に高くつくことになります。

『メンバーの才能を開花させる技法』

●「自発性」がカギになる

解放者の根底にある考え方は、「最高のアイデアは自発的に生まれるものであって、決して強制的には生み出されない」と思っています。
そのため、自発的に働く環境づくりに力を入れています。

●解放者になるために

はじめの一歩

①チップを上手に使う
メンバーの意見を十分に聞く時間を取るために、自分の話す時間に制約を与えるのもありだと思います。
例えば、5枚のチップを持っていることにして、それぞれ話す秒数が決められているとしましょう。
1枚は120秒、3枚は90秒、1枚は30秒のみのコメントができるとし、その会議内で発言できるのは5回のみとする、などと自分にルールを課せば、十分メンバーの意見に耳を傾けることができます。

②意見を区別して伝える
リーダーの言葉には力があり、何気ない意見だったはずが決定事項のように扱われることも少なくありません。
そこで自分の意見を「ソフトな意見」と「ハードな意見」と区別して、メンバーに伝えるのも大事です。
・ソフトな意見=考えてほしい考え方やアイデア
・ハードな意見=明確で断固とした意見

ソフトな意見にはメンバーが反対したり、メンバーの意見を取り入れる余地を作ります。

③自分の失敗を語る
自分の失敗を語ることで、メンバーの失敗を許容する文化ができます。
失敗をするから、そこから学び、能力を開花させていきます。
失敗談を語るときは次の2つを意識すると良いでしょう。

・個人的な経験を語る
メンバーに、自分の失敗とそこから何を学んだかを語るのが大事です。
そして、その学びが今のリーダーシップにどう活きているかも伝えられると良いでしょう。

・みんなの前で語る
失敗は1:1の場で語るよりも、みんなの前で語ることで、失敗した人を励ましたり、みんながその失敗から学べる機会を得ることにもつながります。
失敗を出し、それを笑い飛ばすことで、前進する空気感を作っていくのです。

●まとめ

「独裁者」から「解放者」へ

独裁者は人々のアイデアや能力を抑え込むような、威圧的な環境を作り出す。その結果、メンバーは自分を抑え、リーダーが賛成するような安全なアイデアばかり出し、委縮しながら働くようになる。
解放者は人々の最高のアイデアと仕事を引き出すような、緊張感のある環境を作り出す。その結果、メンバーはもっとも大胆で素晴らしいアイデアを提案し、最善の努力を注ぐようになる。

解放者の三つの実践

①居場所を作る
・メンバーを前面に押し出す
・「話す」よりも「聞く」
・一貫した行動をとる
・チャンスを平等に与える

②最高の仕事を求める
・高い基準を守る
・「結果」よりも「努力」を求める

③素早い学びのサイクルを生み出す
・失敗を認め、共有する
・失敗から学びつづける

解放者になるために

①チップを上手に使う
②意見を区別して伝える
③自分の失敗を語る

意外な発見

①もっとも抵抗の少ない道が独裁者への道だ。組織の権限には偏りがあり、平均以上のリーダーであっても独裁者になることは少なくない。
②解放者は人々に自分の頭で考えることを許す一方で、最高の仕事を要求しつづける。
③増幅型リーダーには緊張感がある。ビクビクするほど抑圧的な環境と、緊張感のある環境の違いを理解し、後者のような環境を作れるリーダーは、はるかに大きな能力をメンバーから引き出すことができる。

参考文献:『メンバーの才能を開花させる技法』

吉村先外


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