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1万ダウンロード突破! 「おカネの教室」ができるまで⑮

計算通りと計算外

夏場になって、「おカネの教室」の勢いは明らかに落ちていた。
というより、発売直後から6000部ぐらいまでが異常な状態だったのだ。
生臭い話になるが、読み放題サービスのKindle Unlimitedは、新規読者が1ページ読むごとに0.5円強の分配金が作者に入る。
ピーク時の1万ページペースだと、毎日5000円前後(税前)の収入が入ってくる計算だ。4月、5月と、私のKindleによる収入は10数万円に達していた。さすがにこんな状態が続くはずはない。ちょっと落ち着いて1日2000~3000ページになっても、物価の高いロンドンで昼飯代が賄えるぐらいの副収入が入ってくるのだ。

ここで「おいおいボロ儲けやんけ」と思った読者のために、言わずもがなの補足をしておきたい。
ぶっちゃけると、最終的にKDP版の「おカネの教室」は1年ちょとで80万円(税前)の収入を生んだ。
だが、私の懐には1円も入っていないのだ
詳細は省くが、KDPのロイヤリティー収入の振込先として英銀の口座がうまく設定できず、試行錯誤するうちに面倒くさくなった私は、KDPの収入は全部、自分の両親が日本国内に持つ口座に入るようにセットアップした。
その時点では「まあ、入ってもせいぜい1年で数万円だろう」と高をくくっていたら、思いのほか大規模な仕送りになってしまった。
まあ、娘のために書いた趣味的コンテンツが、親孝行のツールになったのだから、結果オーライということにしておこう。

ついでに付記すると、「おカネの教室」の総収入の9割はKindle Unlimitedの読者の既読ページから分配される収入だった。Kindle本を買ってくれた読者から受け取ったロイヤリティーは1割にとどまる。
ちなみに前編・後編の両方を買ってもらえて、ロイヤリティーは約300円。
読み放題読者が全編を通読すると、分配金は約170円入る。
つまり、収入の内訳から逆算すると、読者の95%近くはUnlimitedだった。

閑話休題。
さて、前編・後編の無料キャンペーンも枠を使い切り、SNSを通じた拡散も一通り、やってみた。もう、従来の手法では限界は見えていた。
そこで私は、かねて温めていた捨て身の作戦に打って出ることにした。
前編・後編を統合したバージョンの投入と、実質8割値下げである。
もともと「おカネの教室」は、前編100円、後編400円だった。ここへ、新規に統合版を100円で投入する。通読に500円かかったのが100円で済むわけだ。おまけに、統合版は別コンテンツなので、また5日間の無料キャンペーンができる。
8月2日、再ブーストを狙って、私は統合版をKindleストアに投入した。
そしてそこに計算外のファクターが加わり、第2の波が押し寄せてきた。

グラフは「おカネの教室」シリーズの既読ページ数のデイリーグラフだ。発売直後の山から少しあけて、緑色が乗っかった第2の山、そしてそこから少し離れて少し低めの第3の山がある。
緑は「統合版」部分なので、ここは私が狙って読者を広げた部分だ。
だが、それだけではこの第2、第3の山は説明できない。

Kindleストアの「平積み」に抜擢!

統合版を出してしばらくして、私は不自然にアクセスが増えているのに気付いた。特に前編の読者が急増していた。有力ブログやインフルエンサーに取り上げられたのかな、とネットを漁ってみたが、そんな形跡もない。
首をひねること数日、たまたま見たKindleストアのホーム画面で、自分の本が「オススメ」選出されているのを発見した。「灯台下暗し」とはこのことである
Amazonは月に1度、110~120程度のKindle本を「オススメ」として選び、サイト上で大きく露出をさせている。これは書店で言えば、店頭の一番棚で平積みされるようなものだ。玉石混交とはいえ、数十万のコンテンツの中から選ばれたのは大変な名誉だと思った。

このオススメコーナーは、大半が大手出版社の商品とマンガが占める。「自分のコンテンツが選ばれる可能性はほぼ無いな」と思って、完全にノーチェックだった。
だが、選ばれてみると、「平積み」の効果は絶大だった。それまでに多くのレビューをもらって「星」の平均が4.5近くと極めて高かったこともあり、「おカネの教室」はオススメコーナーの中でも「オススメ順」で2位に入っていた。
これで爆発的にダウンロードが増えた
統合版の枠を使った無料キャンペーンも奏功し、12月を前に、「おカネの教室」の部数は1万を突破した。

3月のリリースから約10か月。
たった3人の娘のために書き上げた物語は、ついに1万人の読者を得た。
ありがたいことに、「おカネの教室」は2018年1月にもAmazonの「オススメ」に選ばれ、部数はさらに上積みされた。

このころには、公言したいのを我慢していたのだが、年明けの商業出版も正式に決まっていた。個人出版のマーケティングの傍ら、書籍版のリライトも並行してすすめていた。あの手この手で1万部突破を狙ったのも、商業出版時のキャッチコピーに使えるという計算があった。

出航の準備はほぼ整った。
「おカネの教室」には、さらにスケールの大きい世界、商業出版への船出が待っていた。

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「おカネの教室」ができるまでシリーズをご愛読いただき、ありがとうございます。
Kindle編はここで一区切りとします。
次回からシリーズ3として、商業出版編をお送りします。時計の針を少し戻し、出版社への売り込みのエピソードからリライトを巡る編集者ミッキーとのバトルまで、赤裸々に裏話を綴っていきます。
その前にシリーズ2の総集編をまとめますので、しばしお待ちを。

乞うご期待!

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