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粘着テープでいい~可能性のドアが開く時、鍵はいらない

MLBで大谷君のエンゼルス去就に注目が集まっている。今全米で、いや、少なくとも南カリフォルニアで最も頼りにされている若者の一人だと思う。エンゼルスファンの心理としてはアナハイムに閉じ込めておきたいくらいかもしれないが、彼の未来にはとてつもない世界が広がっている。あまり詳しくないからよくわからないけど。そんなことを考えながら、夕飯のカレーを食べていると部屋のチャイムが鳴った。

誰かがいきなり家を訪ねてくることなんか、この半年間で一度も無い。アパートなので基本的に住人以外は敷地内にいないし、宅配の業者ですらドア前に荷物を放置して去るだけなのに。というかこの部屋にチャイムがあったんだ。

「ダックテープ持ってない?」。おそるおそるドアを開けると近所の住人が立っていた。それが何かわからないし、何がしたいのかもよくわからない。何かテープが必要なんだなあとやりとりを続ける。どうやらそれは強度と粘度高めの粘着テープを指すらしい。ドラマや映画で、泥棒に縛られて拘束されたり、口に貼られて黙らされたりする時によく見るあれね。ダックテープって言うんだ。勉強になる。

彼とは駐車場所が近いので、たまにあった時に立ち話をする仲だ。非アメリカ人がこのへんでは珍しいからか、カタコトのコミュニケーションを厭わず話しかけてくれたのがキッカケだ。どうやら車の中に鍵を置いたままドアロックしてしまったらしく、あの拘束用テープが必要らしい。

紙テープはあったから、これじゃダメ?と聞いてみると、ダメらしかった。OK自分でなんとかするよ、ご飯がいい匂いだね、邪魔してごめんね、と言って彼は去って行った。残念ながら役には立てず。というかあのテープでどうやってロックが解除できるんだろうという疑問はさておき、うちに来るんだ?と思った。お隣やご近所じゃなく、頼る先がうちなんだ。

ここに来てからプライベート生活でアメリカ人に頼ったことは無数にあるが、頼られるのは初めてじゃないだろうか。彼がご近所と馬が合わないだけかもしれないけど。恥ずかしながら役には立てなかったし、大谷君ともずいぶん次元が違うけど、自分の世界がほんの少しだけ広がっていくのを感じた。

※どうやってダックテープで車の中から鍵を取り出すんだという疑問への答えはこちら。これは便利!紙テープじゃ無理だ。自分もいつかやりそうなだけに、もしもの時に覚えておこう。そして一歩間違えると泥棒。因みにダクトテープとも言うそうです。


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