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トンネルを抜けたその先で

職場を抜けて窓から外に出てみた。窓といっても一面が硝子張りの壁のようなもので、開けられないように見えるそれを開ける方法を私だけは知っていた。外に出るとキラキラと風が吹き抜けていく。抹茶色の屋根に横たわる。視界を覆う青空はびっくりするほど青く高く雲が遠慮がちに端の方を流れていく。久しぶりに本物の空を見たような感覚。どこからか潮の匂いがする。さっきまでいた場所、10メートル足らずの壁を隔てた向こう側にいたことが遥か遠い記憶の中の出来事のように錯覚する。そうだったらいいのにと願望を込めて。ゆるやかに雲は流れていく。何もかもが虚構の世界だ。虚構に満ちる世界の中で誰もが自分の守りたい嘘を守るためにハリボテを生産し嘘の値段をつけ嘘の市場に送り出し嘘の売人が嘘だと解ってそれを求める。突き詰めていけばすべての営みに意味はないのにまるで意味があるかのように振る舞いながらこの世界は成り立っている。

誰かに向けた言葉

半分、意地のようなものだ。
意地という言葉の与える印象と心に渦巻く感情とは僅かながら乖離があるがまあ意地と表現して差し支えないだろう。

結局どうしたいのかわからない。

飾らない言葉で表現する場を手に入れてもなお、飾り付けた言葉を披露したがるのはなぜだろう。

夜の散策

夜の公園を歩いてみた。
深夜2時の公園は文字通り闇の底に沈んでいて、色のない視界と、冷たい風が、容赦なく熱を奪っていく。

誰もが夢の世界にいる中で、現実を独り占めする背徳感。来ないでほしい朝が来るのは一瞬なのに、この夜は永遠に明けないような気がした。

私をまるごと愛さないで

結局、どうしたいのかわからない。

意地のような虚栄心のような名状しがたいものによってこんな雑文を書いてみたところで現実を変える気なんてさらさらない。

真実は残酷だから世界は嘘でできているのかもしれない。風に溶けて私も一緒にキラキラと吹きすさびたいと願う。

やっぱり飾ろうとしてしまうのだ。
飾るのは見てほしいからで、特別だって思ってほしいからで、邪な感情を何も差し挟まないとしても、すごいねって、あなたの声なき言葉を聞きたい。
感情を抜きにした純粋な評価で私という人間を測ってほしい。
そうじゃないのなら、物珍しさからくる単なる遊び心だ。

出口のないトンネルから早く抜け出せたらいいのに。
その先に待っているものがどうか平和な世界でありますように。

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