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SAKIMORI

読みたいと思いながら中々読めていなかった「SAKIMORI」を読んだ。
あとがきで著者の石藏拓さんは、フランソワーズ・サガンの「優しい関係」のオマージュであることを明かされているが、私はその作品を未読だったので、全くニュートラルな気持ちで読むことが出来た。
そのことが結果的に良かったと思う。
物語は久留牟田沙樹子という四十歳の女性脚本家が、監督と意見が合わずに私小説を書く、というスタイルで始まる。物語の中に、古き良き時代の映画のシーンが巧みに盛り込まれていて、読んでいて実に心地よい。
夏目漱石の「虞美人草」から始まり、クロード・ルルーシュの「男と女の詩」、ロバート・レッドフォードの「死神の訪れ」、ビル・マーレイの「ブロークン・フラワーズ」などなど…。映画ファンには、たまらんでしょう。
私の場合、ビートルズ等の古い洋楽を愛してやまないので、ついつい小説内に洋楽を盛り込むんですが、石藏さんも映画を愛してやまないんでしょうね。
 
女性心理を描いた恋愛物と思って読み進めると、いい意味で大きく期待を裏切られる。
純粋でありながら歪んだ愛情からの犯罪が明かされます。私の大好物(笑)
今年読んだ数十冊の小説の中で、一番おもしろかった。
まだ積読本が数十冊は残っていますが…

ちなみに、本作品は舞台劇にもなっています。


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