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【連載④】ティール・フラット・ホラクラシーな組織を作るだけでは組織が崩壊する!?その解決策は??

前回は、織田信長の成功要因を組織論から考察してみた。

戦国時代において「農業と武士のパラレルワーカー」が主流だったのに対して、信長は”戦”専門集団を作り上げたことで一気に”天下布武”を推し進めることができた。「ゲームのルールを変えた者が勝つ」とは、まさにこのことである。

さて、今回は、前回とは逆に組織が崩壊していくプロセスを見てみたい。

【組織が「病む」3つの原因】

歴史を振り返ると様々な組織が生まれては滅びていった。その栄枯盛衰の裏には、同じような失敗要因がある。堺屋太一氏の『組織の盛衰』では、代表的な原因が3つ挙げられている。

①機能体の共同体化
②環境への過剰適応
③成功体験への埋没

今回は、①機能体の共同体化を取り上げてみる。
さらに後半では、解決策も提示してみようと思う。

※お詫び
次回のnoteでティール等の組織を作るだけだとリスクがあるよねっていう問題的に対する仮説・回答を書きます(__)
(思いのほか書き始めたら長文になったので、2回に分けて投稿予定)

①機能体の共同体化

組織には自らの拡大を求める一方で、内部の結束強化を欲するアンビバレントな力学が働いている。分かりやすい表現に言い換えると、組織には何かしらの目的(勝利・売上)があるにもかかわらず、その組織に属する構成員は、組織の目的とは異なる自らの権利(幸福・地位向上・権限拡大・様々な報酬等)を求める傾向がある。

同じ志のもと集まったメンバー同士であっても、そのうち当初の目的が曖昧になってしまい、結果的に一緒にいるとなんとなく楽しいから一緒に過ごす関係性に落ち着いたといった経験は誰にでもあるのではないでしょうか?

この「群れる」現象は、社会学の古市憲寿さんのデビュー作『希望難民ご一行様』の中で描かれた若者像と重なるところがある。

本書の要旨としては、世界平和を標榜するピースボートに乗った若者たちの間では、本来の目的である世界平和という目的は忘れさられ、一緒に過ごすこと自体が目的化してしまうという現象が分かりやすく描き出されている。

古市さんの主張

ピースボートの中では同じような年齢・価値観を有するグループ(本の中では「居場所」と呼ばれている)があるので、そこにいれば安心してしまうという論理だ。もちろん、この場合の居場所とは、機能体ではなく共同体を意味している。

古市さんの言葉を借りれば、「『共同性』が『目的性』を冷却した」ということになる。「冷却」という社会学の専門用語を使ってくるあたりが古市さんっぽい(笑)

共同体の怖い側面

さて、この機能体の共同体化の厄介なところは、一度そのループに入るとなかなか抜け出すことが難しい点にある。ひとたび共同体化が始まれば、それを肯定する人事やリソース配分がますます強化され、やがては「正義」を以って語られてしまう。

共同体化した組織において高い地位と大きな権限を持つことだけを願う「小心な野心家」は、メンバーから信頼を得ようとして共同体的な価値観(居心地の良さ・安定)を強調する。しかも、この「ロビー活動」とも呼ぶべきムーブメントは、組織の結束力を高めるため・モチベーション向上のためという大義名分で語られてしまうため、反対意見が発生しづらい。

「メンバーのため」「会社のため」というフレーズが、自己(もちろん野心家の人達)の「正義」を押し通すための便利なキャッチフレーズと化してしまっていることに誰も気づかない(この視点は気をつけたいですよね&
&自戒の念も込めて)。

キツネの権力!?

この現象は、名著『組織戦略の考え方』(池沼幹著)において「キツネの権力」と呼ばれている。キツネの権力とは、ことわざ「虎の威を借る狐」に倣い、「キツネ」社員が、組織内で

「社長が言っているから!」
「会社のためだから!!」
「お客さんに言われたから!!!」

と何かにつけて言いふらす現象を指す。

「トラ」に位置づけられる社長・会社・顧客を盾にして、自分の意見を何とか通そうとするのだ。「キツネ」社員は、自己主張の正当性を担保するために、架空の「トラ」をでっちあげて、自己の「正義」を振りかざしてくる。

レトリックとしては過激であるが、どの組織でも「キツネ」社員が生まれる可能性はあるので、注意されたい問題である。

エーリッヒ・フロムが『自由からの逃走』の中で示した「権威主義的性格」とも重なる部分があると考えている。


具体例としての大日本帝国陸軍

堺屋さんの本に戻ると、この「機能体の共同体化」については、大日本帝国における陸軍のケースを取り上げている。

日本帝国軍は、もともと海外列強国の侵略から国を守るという外的目的に基づいて、政府主導で作られた。軍隊という組織が整備されてくると、軍学校(陸軍士官学校、海軍兵学校)で専門教育を受けた職業軍人が増えてくる。

そうすると、彼らは、共同体内の構成員(軍人)を満足させ、居心地良くすることを第一優先に考えるようになり、軍を拡大してポストを増やすという内的目的が発生する。さらに、軍の地位向上のため、戦争否定派の政治家を激しく攻撃するようになった(五・一五事件や二・二六事件など)。

本来は、外敵から国を守るという外的目的のために設立された組織(機能体)であったが、気づけば軍人達が内的目的である居心地の良さを求めたコミュニティ(共同体)と化してしまったのである。

ここら辺の話は、名著『失敗の本質』に詳しい。

一度、共同体と化した組織では、イノベーションが起きづらくなり、組織としては”死”に至る危険性すらあることを歴史は教えてくれる。


今回は、いったんここまでとします!

機能体の共同体化だけで1冊の本が書けるくらい”濃い”論点だと思ってまして、どんどん分量が多くなってしまいました(笑)

次回は、機能体の共同体化する理由とその対策について整理してみたい。

以上です&ご精読ありがとうございました!!

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