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Altered Scaleの意図するところ

ジャズを学んでいると、Dominant 7thにはいろいろなスケールを用いることができると学びます。Mixolydian、Harmonic Miner Perfect 5th Below、Whole Tone Scaleなど。
そんな中でAltered Scaleというのが特に難問でした。ルート音と3rd、7th以外は全てNatural TensionではなくてAltered Tensionを使ったスケールですと説明はあります。

これは、結果としてのスケールがどうなっているのかを説明はしていますが、なぜこの様な音使いをしているかは説明していません。その理由について考えたことがあるので、それを書いてみます。

Altered Tension

ジャズでよく使われるテンションノートには、Natural TensionAltered Tensionの区別があります。度数で示す際に、数字だけで示すのがNatural Tension、数字に♭や♯を加えて示すのがAltered Tensionです。
Alteredという英語は"変更された"という意味があり、これは、Ionian Scale、あるいはAorian Scale上にある音をNatural、それ以外のスケールにない音をAlteredと考えているということでしょう。

具体的には下記の様になります。

Natural Tension
9th、11th、13th
Altered Tension
♭9、♯9、♯11、♭13

これらのTension Noteをどの様に考えるが、どのような組み合わせで使うのがセオリーかを書いた文章もありますので、それは下記の投稿をご覧ください。

Altered Dominant

コード進行のバリエーションを学ぶと、Dominant 7th (Ⅴ7)を使う代わりに、Altered Dominant(♭Ⅱ7)を使うことができると教わります。この根拠はⅤ7と♭Ⅱ7の使っているトライトーンが全く同じだということです。そして、3rdと7thのトライトーン以外の音は、5つとも異なる音になります。
具体的にハ長調のⅡ-Ⅴ-Ⅰの形で表してみると、次の様になります。

Dominant 7th
Dm7-G7-CM7
Dm7:D/F/A/C
G7:G/F/A/B
CM7:C/E/G/B

Altered Dominant 7th
Dm7-♭D7-CM7
Dm7:D/F/A/C
♭D7:♭D/F/A♭/B
CM7:C/E/G/B

このAltered Dominant 7thを使った時のコード進行の特徴というのは、ルート音が半音ずつ下がるということです。そして、ルート音が下がるだけではなく、3rd/7thを除いて、テンションノートを含めた全ての音が半音進行になります。

ルート:D-♭D-C
3rd:F-F-E
5th:A-♭A-G
7th:C-B-B
9th:E-♭E-D
11th:G-♭G-F
13th:B-♭B-A

この様に、Altered Dominantを使うⅡ-Ⅴ-Ⅰハーモニーのポイントは、このⅡ-♭Ⅱ-Ⅰで連続する半音進行なのだと考えています。

Altered Scale

上記の2つの内容は、特に問題なく納得できたのですが、問題はAltered Scaleです。

様々な書物における紹介では、このスケールはAltered Tensionを使うからこの様に名付けられているという様な説明になっています。しかし、僕にはその説明ではしっくりきませんでした。それぞれのテンションノートには、個々にそれに相応しい使い方があります。それをまとめて使っているスケールですと言われても納得できないのです。何故そんな使い方をするんだと疑問が湧きます。

しかし、あるときにAltered Scaleはそう理解するべきではないのではないかと思いつきました。上記のAltered 7thの考えを敷衍し、半音進行のテンションハーモニーを作りたいから使われるスケールなのではないかと考えたのです。

これは、Fly Me to the MoonのChord Harmonyを考えたときに、Ⅱ-Ⅴ-ⅠのⅤの部分のハーモニーに、Natural Tensionを使った場合とAltered Tensionを使った2つのバージョンを使ったことから思いついたアイデアです。
Natural Tensionを使った場合とAltered Tensionを使ったハーモニーを、同じⅡ-Ⅴ-Ⅰに載せてみたんです。そうしたところ、どちらのハーモニーも使えるということが分かりました。そして、そのハーモニーのテイストはかなり変わります

Dominant 7th with Natural Tension
Dm7-G7-CM7
Dm7+9:D/F/A/C/E
G7+9+13:G/F/A/B/E
CM7+9:C/E/G/B/D

Dominant 7th with Altered Tension
Dm7-G7-CM7
Dm7+9:D/F/A/C/E
G7+♭9+♭13:G/F/♭A/B/♭E
CM7+9:C/E/G/B/D

Natural Tensionを使った場合、全てその調における音程を使っているので、とても明るいキャラクターの音の動きになります。その代わり、テンションノートの音の動きは全音音程になり、半音音程で動く滑らかさにはやや欠けます。
一方、Altered Tensionを使った場合、ルート音は5度進行をするのですが、3thと7rdは半音の動きを1回するだけ、Tension Noteは半音音程の動きを2回繰り返します。そうすると、音の動きはとても滑らかなものになります。演奏はその様な効果を狙うのですが、そうなると譜面には多くの臨時記号が出てくる様になります。

このことに気がついてから、改めて多くのバップの譜面を見ると、楽譜に多くの臨時記号が現れているのは Dominant 7thの場合で、Sub DominantのⅡm7やⅣM7の場合には、その様な臨時記号があまりないことが分かります。

これらのことから、Dominant 7thでのフレーズ作りにおいて、半音音程による変化を作りたい場合にAltered Tensionを用いることができること。そして、それをルート音以外の全てに適用したのがAltered Scaleなのではないか、というのが僕の考えていることです。

ですので、僕はAltered Scaleは7th ChordにAltered Tensionを加えたスケールと理解せず、ルートⅤに♭Ⅱ7の音を弾いた音階と考えています。
例えばⅤ7のAltered Scaleは次の様な理解になります。

7th ChordにAltered Tensionを加えた音階
Root/♭9/♯9/3rd/♯11/♭13/7th

ルートⅤに♭Ⅱ7の音を弾いた音階
Root/♭9/♭3/♭11/♭5/♭13/7th

上の様に、ルートに対して♭や♯のついたテンションノートが加わった音階と理解するよりも、下の様にルート以外のすべての音が半音下がった音階と考えた方が、直感的に理解しやすいと思うのです。
そして、そのために半音音程を使った滑らかな音の変化が得られる。そして、それが理由で臨時記号がたくさん出現すると理解した方が、実際の音楽の効果とも合致しているのではないかと考えています。

端的に書くと、♭Ⅱ7/Ⅴと理解すると良いと言うことですね。

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