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時代を読みイノベーションを起こす 〜令和の価値創造は「意味」を追求する

✔︎ 時代ごとに価値観は変化し、それに伴ってニーズも変化している
✔︎ 「モノ」から「機能」、「体験」を経て、現代では「意味」が新たな価値として求められている
✔︎ イノベーションは単なる技術やサービスの革新だけでなく、時代の精神を反映した価値観の変化に基づくべし

#イノベーション #提供価値 #価値創造


時代ごとに求められる価値は大きく変化する。

戦後の焼け野原では、何もない状況が「モノ」そのものが価値だった。物資が不足していたため、日常生活に必要な基本的なアイテムが非常に重要だった。三種の神器(電気洗濯機、電気冷蔵庫、白黒テレビ)、新三種の神器(カラーテレビ、クーラー、自家用自動車)と、生活の向上と近代化を象徴するアイテムがもてはやされた。皆が皆、共同幻想として追い求める生活像が一致していたため、モノを作れば売れた。

高度経済成長期に入ると、日本経済は急速に発展し、市場には多様な商品が溢れた。すると次第に同一カテゴリで多くの企業がしのぎを削るようになり、「機能」や「スペック」が競争の中心となった。技術者は、より高性能、より効率的な製品をこぞって開発した。消費者は技術の進歩を求め、製品の機能向上に価値を見出していた。

昭和後期から平成にかけて、物質的な豊かさが一定レベルに達すると、人々の関心は「体験」へと移っていった。旅行や娯楽、教育といった非物質的な価値が重視されるようになり、豊かな生活を送るための新たな方法として体験が求められた。これによってモノはモノそのもので価値を提供できなくなり、体験としてのサービスを提供するための要素となった。

そして令和に入ると、人々の価値観はさらに多様化した。正確にはそもそも人は多様な存在であったが、マズローの欲求階層説でいう生理的欲求、安全欲求が社会的に満たされ、親和欲求、承認欲求も自力で満たすことができるようになり、自己実現欲求を追求することができるようになったともいえる。人々はさらに深い「意味」を求めるようになった。消費行動はより個人的で意味のあるものへとシフトし、商品やサービスに求める価値は個々の生活や価値観にどれだけ貢献するかに依拠するようになった。

時代の変化の流れを理解することは、イノベーターにとって非常に重要だ。イノベーションは技術やサービスの改善だけではなく、社会的、文化的なニーズの変化を捉え、それに応じた価値を提供することにある。それには、現代社会が何を求めているのか、その時代時代の価値観を正確に読み取る洞察をし、5年後10年後にどんなニーズが生じるのかを予想しなければならない。

多くの日本企業がイノベーションを起こせないのは、経営のレイヤーでこれを理解できていないことにある。もはやモノそのものには価値がないにも関わらず、未だに「機能」や「スペック」を判断基準としている。もちろんそれが不必要という話ではない。しかし、それだけを追求して高機能・ハイスペックなものを作ったとて売れるわけではない。人々がどんな体験や意味を必要としているかを理解しなければならない。日本企業がハードで中韓に負け、ソフトやネットで米国に負けた理由がここにある。スティーブ・ジョブズが憧れたソニーですら、それに気付くことができずに負けたのだ。

価値の変化を理解し、新たな時代のニーズを予想する価値想像のアプローチを取ることで、イノベーションは成功につながる。持続可能な成長にビジネス・トランスフォーメーションするためにも、これまで固執していた価値とそれに伴うプロダクトづくりから脱却し、新たな価値の創造にこそ取り組まねばならない。それこそが両利きの経営でいう「探索」だ。


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