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第4回こうさてん 非常に濃い時間でした

第4回 こうさてん振り返り

第4回こうさてんのゲストは、ひとり出版社 那須里山舎の白崎裕一さんでした。打ち合わせの段階から今回は時間が足りないかも…と、一抹の懸念を感じていましたが、悔しくもその通り。白崎さんの人生を追い、そこから見える「こうさてん」へ辿りつくには到底時間が足りませんでした。しかし、話を聞ければそれもそのはず。白崎さんがなぜ今のような活動をするのか、白崎さんにとって働くとは?生きるとは?を受け取るためには幼少期から体験を聞かねばそこに辿りつけないのだと感じました。この振り返りに全てを書けませんが、打ち合わせの段階から池田が 親子ほど歳の離れた白崎さんに最大限の敬意を込めた親しみを感じていた理由が少し納得できた素敵な夜でした。 ひとまず今回の振り返りを行ってみましょう!

・「白崎一裕さんとは何者なのか」
1960年福井県出身の白崎さんですが、幼少期から転校が多く各地で生活されたそうです。転校先では集団に馴染まず人間関係を上手くはやっていなかったと自身を振り返っていらっしゃいましたが、そんななかでも学業の成績はすこぶるよかったようです。いわゆる優等生として順風満帆な高校生活を送ろうとしていた矢先、友人からのとある一言をきっかけに本物の学問とはなんだろうと考え、生きた知恵を得るために哲学をはじめとする書物にのめり込んだとのことでした。受験のための勉強―ひいては学歴社会への批判をはじめ、大学生の頃には人文学・社会科学をはじめとした人間や社会について考えるはずの学問が、「研究室」というアカデミアの中でのみ行われていることへの問題意識を抱いていたそうです。白崎さんはマルクスの言葉を引き、哲学によって世界を解釈するのみならず、主体となって現実を変えるために活動をすることが重要だと話されていました。そのような考えもあってか、大学を卒業してからは、ほぼ自営・フリーランスとして、不登校の子どもたち(いわゆるヤンキーと呼ばれる子たちが多かったそうです)の私塾、フリーライター、NG機関紙編集、障害児の支援機器輸入販売など7回ほど転職し活動されてきたそうです。2023年現在は黒羽(現・大田原市)で、ひとり出版社 那須里山舎を営まれています(共著『ベーシックインカムは希望の原理か』(フェミックス)など)。

・「活動の根源は怒りのエネルギー」
白崎さんの活動の源が何であるか、なぜこのような活動をしてきた/するのか、が今回のこうさてんで個人的にも一番気になった所でした。高校生の頃の友人の言葉は一つのきっかけとしてあったと思いますが、話を聞く限りは白崎さん自身のお父様の影響が大きかったように感じられました。お父様は白崎さんに、本は読むな、モノは考えるな、とおっしゃったそうです。その暴力的なまでの抑圧が逆に青年期の白崎さんに、父とは違う道を進もうと思わせるきっかけになったと語っていました。「この(活力の)源は怒りであり、ともすると自らに課せられた業のようでもある。一般化して人に勧められるやり方ではない」とも話しておられました。精力的な活動を称えて、池田がバイタリティという言葉を用いた際に、白崎さんが「いやバイタリティがすごいとかではなくて、ただ10代の頃から何も変わってないだけ」と笑顔でおっしゃる背後に並々ならぬ思いが横たわっているであろうように感じられました。
 


・「白崎さんの人生に影響を与えた本」
今回のこうさてんでは、白崎さんの人生に影響を与えた本の紹介も行われました。こちらも時間の都合上 イベント中に全てをご紹介頂くことが出来ずに申し訳ありませんでしたが、一部をこちらでもご紹介します。まず、白崎さんの人生に影響を与えた本として「水源をめざして 遠山啓」が挙げられました。遠山は数学者としてより優れた体系的な数学の学習法を考案したのみならず、晩年は知的障害の子どもとの出会いを通じて、教育の力と子どもの発達の可能性に気付き、どんな人間にも内包的な知的探究心はあり他者と競争する必要はないと論じています。そのあたりが白崎さんの学歴社会批判にも色濃く影響しているのだろうと推察されました。また、白崎さんは「経済学・哲学草稿」や「フォイエルバッハのテーゼ」などのマルクスの著作を紹介されました。前者では労働疎外論について触れ、資本主義社会のもとでは労働(生産物)が誰の役に立っているかわからない社会構造になっていると話をされました。


・「明るいフィクサー」
最後に会場の参加者も交えて白崎さんと対話していた際に、白崎さん自身が現実を変えるために政治家にならないのか?という質問が出ました。その際、白崎さんは明るい(!)フィクサーになり若い世代を応援することが自分の役目だと答えていらっしゃいました。最初に白崎さんとお会いしてから、なぜこんなに見ず知らずの若造に優しく、温かくしてくれるのか不思議に思っていましたが、この言葉を聞いて納得しました。僕が(勝手に)師と仰ぐ内田樹先生も後進を応援することが自分の役目だと全く同じことをおっしゃっています。改めてそのような先達のひとりとして白崎さんに出会えて本当によかったと思えた瞬間でした。

さて、ヴァルネラビリティについての考えなど、まだまだ白崎さんに伺いたいことが沢山ありましたが、残念ながら今回のこうさてんは時間切れになってしまいました。ぜひ今後も白崎さんと協働し、ひるねはひるねで今できる身近なことをコツコツやっていこうと思った素敵な夜でした。

白崎さんのことが気になった方は、
ぜひ那須里山舎のホームページや白崎一裕さんのnoteなどもご覧ください。
・那須里山舎 https://nasu-satoyamasya.com/
・白崎一裕さんnote https://note.com/rohi


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次回のこうさてんは、2024年1月8日(月・祝)です!
ゲストは、元プロボクサーの理容師であり、写真家である船見征二さんです。こうさてんの表題の写真は船見さんの作品をお借りしています。ボディブローのように響いてくる力強い作品をつくる船見さんの人生とはいかに。個人的にも非常に楽しみしております。乞うご期待です。

※こうさてんは、ひるねインスタグラムプロフィールのgoogle フォームからお申し込み頂けます。まだひるねにいらしたことがない皆様もぜひお気軽にご参加ください。お待ちしております。

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