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がんと『遺伝子ON生活のススメ』

『遺伝子ONで生きる』ことは、筑波大学名誉教授の村上和雄先生が提唱されたものです。
最近、先生の著書を読み、興味深い考え方だなぁ~と感銘を受けたので、ご紹介させていただきます。

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▼遺伝子ONとは?
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人間は約60兆個の細胞でできているとされています。
その細胞はもともと1個から分裂、増殖し、最終的には60兆個に至ります。
分裂する度に少しずつ遺伝子が変わるということはなく、基本的には同一のコピーが作成されていきます。
では何故、ある細胞は心臓になり、また別の細胞は肝臓など別の臓器になるのでしょうか?
ここに遺伝子のONとOFFが関わってきます。
心臓になるのに必要な遺伝子がONになった細胞が心臓になり、肝臓になるのに必要な遺伝子がONになった細胞が肝臓になるわけです。
また、あるところまで分裂・増殖を繰り返し、必要数に達したら、増殖に関わる遺伝子がOFFになり、それ以上増殖しなくしたりします。
これが、遺伝子のONとOFFで、細胞が持っている遺伝子が同じにもかかわらず、別々の働きができる要因です。

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▼遺伝子の多くはOFFのまま
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村上先生いわく、普段ONとなっている遺伝子は5%ほどであり、残り95%の遺伝子はOFFとなっているとのことです。
もしこのOFFとなっている遺伝子の中で、自分にとって好ましい遺伝子が少しでもONになってくれれば、
例えば、記憶力が良くなったり、頭の回転が速くなったり、力が強くなったり、スポーツが上手になったり、
それまでの自分と少し違った自分になれるというわけです。
もちろん、ONになると「がん」になってしまう「がん遺伝子」などの好ましくない遺伝子もありますので、どの遺伝子でもONになれば良いわけではないのですが
「がん遺伝子」のような好ましくない遺伝子にはできる限りOFFのままでいてもらい、好ましい遺伝子をONにしてどんどん働いてもらおうというのが、村上先生が提唱する『遺伝子ONで生きよう』です。

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▼どうやって遺伝子のON/OFFを切り替える?
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遺伝子のON/OFFを切り替えるスイッチは
①物理的な刺激
②化学的な刺激
③精神的な刺激
この3つの刺激がスイッチに関わっているようです。
それぞれ少し詳しく見ていきましょう!

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▼スイッチ①:物理的な刺激
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ある種の魚は、水温の変化で、雄と雌の比率が変わるものがいるそうです。
雄になるか雌になるかを決めるための遺伝子のスイッチが、水温という物理的な刺激に反応して、ON/OFFすることで起こることがわかっています。
怪我をした際に、キズが治っていくのも、キズ周囲の細胞の遺伝子がONになり、増殖するようになるためです。そして、キズが治れば増殖スイッチはOFFになります。
ホントよくできてます。

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▼スイッチ②:化学的な刺激
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タバコががんの発生に関与していることはご存知かと思います。
山極勝三郎先生が、ウサギの耳にコールタールを塗ることで人工的に「がん」を発生させた功績をご存知の方も多いかと思います。
コールタールのような発がん物質が体内に入ると、がん遺伝子がONになり、「がん」が発生すると考えられています。
タバコには、タールの他、60種類ほどの発がん物質が含まれているとされ、近年の研究では、1年間毎日1箱のタバコを吸うことで、肺に150個の遺伝子の突然変異が蓄積していることが報告されています。
(https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/1104/index.html)
このような遺伝子の突然変異の結果、本来は眠っていた「がん遺伝子」のスイッチが入ってしまい、結果的にがんになってしまうのでしょう。

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▼スイッチ③:精神的な刺激
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村上先生がもっとも注目しているスイッチが、この精神的な刺激によるものです。
大きな精神的なショックを受けると白髪が増えたり、髪の毛がたくさん抜けてしまったりするというのはどこかで聞いたり、実際に体験されたりしたことがあるのではないでしょうか?
このような現象は、精神的なショックを引き金に、髪の毛(毛根細胞)の遺伝子がOFFになったことで起こっていると考えられています。
ストレスで胃潰瘍が増えたり、「がん」になってしまったりするのも、悪い遺伝子がONになったか、良い遺伝子がOFFになったためと村上先生は考えました。
そして、「感動、喜び、イキイキ、ワクワクすることが良い遺伝子のスイッチをONにし、悲しみや苦しみ、悩みが悪い遺伝子をONにする」のではないかとの仮説を立て、それを研究するために「心と遺伝子研究会」を立ち上げました。

一つの研究成果として、「笑うことで血糖値が低下する」というものがあります。
糖尿病患者さんに、講義前に500kcalの昼食を摂取してもらい、1日目に退屈な講義を聴いてもらい、2日目に漫才を聞いてもらったところ、退屈な講義のあとには血糖値が123mg/dl上昇していたらしいです(退屈な講義、恐るべしです)。
一方、漫才を聞いてもらったところ、血糖値の上昇は77mg/dlのみであり、123-77=46mg/dl分血糖値の上昇が抑えられたというものです。
さらに、笑い前後で遺伝子の働きを調べたところ、大笑い後に活性化した遺伝子が10種類、活動が低下した遺伝子が5種類見つかりました。
活性化した遺伝子は、T細胞の働きに関与するものなどで、免疫力向上に重要な役割を持っているものだったとのことです。
また、活動が低下したものは、がん抑制遺伝子の働きを邪魔する遺伝子だったとのことです。
本研究では、血糖値がどうなるか?がメインでしたが、結果からは、笑うことで免疫力が高まったり、がん抑制遺伝子の働きが助けられたりすることがわかりました。
この結果から、村上先生はご自身の仮説:「感動、喜び、イキイキ、ワクワクすることが良い遺伝子のスイッチをONにし、悲しみや苦しみ、悩みが悪い遺伝子をONにする」が正しいことを確信され、
『遺伝子ONで生きよう!』というメッセージをより多くの方に広める活動にも精力的に従事されたようです。

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▼まとめ
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これまで、笑ったり、運動したり、良い睡眠をとると免疫力が上がるなどとご紹介させていただきましたが、何故?と聴かれると「なんでだろう?でも、結果的にそうなるようだよ」としかお答えできませんでしたが、遺伝子のスイッチのON/OFFといわれて、僕的には結構納得した部分が多かったです。
そして、「今、良い遺伝子をONにしたな」というイメージが湧きやすくなった気がします。
プラセボ効果とかも、まだ実証されたわけではないですが、遺伝子のON/OFFが関係しているのだろうなって考えています。
プラセボ効果も、時にはがんを治すほどの効果を出したりしますので、良い遺伝子がONになるパワーは想像以上かもしれませんね。

良い遺伝子をONにし、悪い遺伝子をOFFにする生活をしていきたいと思いましたというお話しでした。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
また、次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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