卒業式

 良い卒業式になりました。卒業式の後に開かれた謝恩会で同窓会長がおっしゃっていた「県下一の卒業式」という賛辞も、あながち大げさではなかったかもしれません。

 卒業式、それも高等学校ともなると、子どもたちに義務教育過程のときのようなあどけなさが残っているわけでもなく、また進学や就職が決まっていない子などは感慨を抱く余裕もない。どこか乾いた雰囲気になりがちです。

 事実、わが子の卒業式も次第にそって淡々と進みました。ところが、式の終わり近く、卒業生代表の読み上げた答辞が、みんなの深い感動を誘ったんですね。彼は、はじめは用意された文章を読み上げていたのだけれど、最後の最後になって書かれたものから目を離し、式場に集ったみんなを見ながら、自分の言葉で語りだしたんです。

 たくさんの友人に巡り会えた幸せ、ぶつかっていくと全身で受け止めてくれた先生たちへの感謝、進学・就職に精いっぱいがんばって母校の歴史に新たな一頁を加えることが出来たという自負。この学校が、この学校の先生たちが大好きだ、在校生のみんな、後を頼むよ──という、母校と後輩への熱いメッセージ。

 ありきたりではない、彼の実感のこもった、彼自身の言葉の持つ強さが、みんなの心を打ちましたね。新採の先生はもちろん、百戦錬磨のベテラン先生の目頭をも熱くした、すばらしい答辞でした。

 大好きだといえる生徒、大好きだといわれる先生たちが、うらやましい。(2002.03.02)

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