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石垣島、あらら?な旅日記 4

空港へ

石垣島に三泊しました。
予定していたことを見事にどれもやれませんでした。
シュノーケリングをやって、海のお魚とたわむれるんだ、という夢も、石垣島鍾乳洞で感動することも、おいしい沖縄料理を食べることも、竹富島をたくさん味わうことも、みんなできなくて、お金だけ飛んでいって、カップめんを食べるという旅。
でも、ホテルで帰りの荷物をまとめるわたしは、ほんのりと幸せでした。
たくさん海岸を歩けたし、貝がらも拾えたし、海の透明さにも出会えた。そして、ずっと、夫がそばにいてくれました。
こんなになんにもないところ、初めて来たね、と笑いあって、カップめんしか食べるものがなくても、笑い合ってて、おもしろいのでした。
わたしたちの旅って、いつだって、こんなふうでした。
どこか抜けていて、スケジュールはなくて、ただ、右往左往している。
ほかの賢い人たちは、もっと効率よく動くのだろうけど、わたしたちは、間抜けなんだもん。
ホテルを出て、石垣空港行のバスに乗り、車窓からの眺めは、どしゃぶりでした。ああ、今日はわたし、アマテラスを呼ばなかったわ、自由にしていいよ、って、言ったのでした。
そして、海や浜ややどかりさんにさよならと、ありがとうを言ってお別れしてきました。
石垣空港に着くと、まず、飛行機の搭乗手続きをしなければなりませんでした。オンラインチェックインというのをスマホでやるのがわからなかったためです。
空港でお土産を買いたい思いがあり、時間があまりなかったので、焦っていました。手続きはなんなくできて、それから、お土産探しです。
お菓子とか適当にみつくろい、大事な友だちには、もっと厳選したかったけど、うまく選べませんでした。でも、飛行機の時間が迫っていきているので、それで諦めました。
すると、ANAの男性がちかづいてきて、
「あの、〇〇さんですか?」
と、うちの苗字を尋ねるのです。
夫がはい、と応えると、その人はわたしの障害者手帳を持っているではありませんか。搭乗手続きをしたときに忘れたらしいのです。バスから降りるとき、運転手さんに見せるので、手に持ったままで、手続きに行ったらしいのです。
「わあ、ありがとうごさいます」
ほんと、よく見つけてくださったと思います。手帳には顔写真が貼ってあるので、わかったのだろうとは思うのですが、わからないままということもあり得ました。
夫はおもしろそうに、
「やっちゃったねー」
と言います。
「見つかったんだからいいでしょう」
「でも、忘れて帰ったら、たいへんだったね」
「ほんとね。いい人はいるわね」
こうして、わたしたちは帰りの飛行機に乗りこんだのでした。

帰りつける家


家に帰るって、なんていいのでしょう。
想像していたのとは、まったくちがう旅をしながらも、楽しくて、幸せでした。
わたしの窓の外では、白樺の木が葉を揺らして、ざわざわと音をたてるのですが、竹富島の自然は、そよ、とも動きませんでした。無言でいた、あの草木、空気、空。いま、それを思い返すと、その不思議さにまた会ってみたいと思います。
わたしたちの旅の枠は外れ放題でしたが、自由に自然を感じる時間だけはありました。
わたしはそれを持ちかえり、きっとわたしの土壌の一部にするでしょう。
そこにわくわくするものを感じています。

追記

カップめんと、お菓子生活をしていた反動で、札幌に着いてから、夫は回転ずしに行きたいと言い、わたしたちはキャリーケースを引っ張って、すし屋に行きました。24組待ちでしたが、それでもいいと言います。一時間ほども待って、すしを食べることにしましたが、わたしは6皿ほどで、もういいと思ったのに、夫はどんどん食べるのです。あれ?もうお金7000円しかないよ?
「うまいなあ」
と言いながら、中トロとか食べています。
この人、ほっといたらどれだけ食べるのかしら。
と心配になってきました。わたしがもういいでしょ、という顔をしたのがわかったのか、夫はおあいそを頼みます。
会計にいったら、9800円といわれ、
「ちょっと、お金足りないよ」
と夫に言うと、夫は自分の財布からお金をだし、支払いました。
9800円だって!
一食に?
わたしはくらあっとしました。
「もう7000円しかないって言ってるのに、あんなにたくさん食べないで」
夫は支払ったんだからいいじゃないかという顔。
ああ、もう。
だから、うちお金ないのよ。
まったくもう。
これだから、これだから、いっしょにいないとだめなのよ。
ずっといっしょにいないと、いないと――わたしは困る、の。
思い通りにはならないけど、たいせつで・・・わたしは帰りの夜道を夫は放って、走って部屋へ向かうのでした。

                             おわり


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