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コタは わたしのなかに

コタはしとしと雨の降る夜に
わたしを訪ねてやってきた
やせっぽちで汚い子猫
あなたを家にいれるかどうか迷ったよ

子猫は大好き
でも そのとき家にはビーっていうきかん気の猫がいたし
それになによりわたしは
寝たきりの母の介護をしていて
いっぱいいっぱいだった

でも いま 目のまえで
みゃあみゃあと必死で鳴くあなたを
追い払うなんてできなかった
きっと捨て猫なんでしょう
人間に飼われていたんでしょう

わたしはあなたを家にいれて
ビーのごはんをあげた
あなたはふがふが言いながら夢中で食べたね
それから その晩はいっしょに眠った

あなたはわたしの家の子になった
真っ黒な猫で ノミを洗い流すため
二回シャンプーした
コタ、と名づけたのはこたろうの略だった

でも 夢ででてきたんだ
「神太」と名づけなさいと
夢で言われたんだ
コウタだと 神の子だと

コタはほんとうにいい子で
頭もいいし 穏やかな性格だった
そして わたしが泣くと必ず
膝の上にのってお鼻でチュウしてくれるんだ

ごみ捨てに行くときはついてきて
とことこといっしょに歩いた
ママ、ぜんぶ覚えているんだよ
コタがどんなにおりこうさんだったか

コタ どうしている?
あなたがこの世を去って9年になる
あなたに備わっていた神的な性質
あれは あの時期のわたしに必要なものだった

コタ
人間だけが慈しみを知ってるわけじゃないって
あなたが教えてくれた
あなたはほんとうに神さまの猫

泣き顔も笑顔もあなたは
受け容れてくれた
ありがとう
泣き虫だったママはもうぜんぜん泣かないんだよ
・・・幸せになったの

わたしは自分のなかのいるコタと
話す
そう 
コタは無限の内面にいるんだ

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