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舞台 「なかなか失われない30年」 観劇レビュー 2024/05/05

劇団      :アガリスエンターテイメント
脚本・演出   :冨坂友
出演      :淺越岳人 / 伊藤圭太 / 榎並夕起 / 鹿島ゆきこ / 古谷蓮 / 前田友里子 / 矢吹ジャンプ / 江益凛 / 兼行凜 / 菊池泰生 / 北川竜二 / 斉藤コータ / 雛形羽衣 / 山下雷舞
上演会場・日時 :新宿シアタートップス(2024年4月27日~5月6日)
http://www.agarisk.com/nakanaka/

入居者の移り変わりが激しい繁華街のビルの1室を舞台とした、時間混在コメディ。約2時間の上演時間、お腹いっぱい笑わせていただき、あと少し懐かしい気分も感じさせていただいた。

あらすじは、2024年現在、このビルを相続した新オーナーが売却話を進めるため、この一室にいると、電気点検業者の親父が現れて、ビルのブレーカーを入れ直したところ、1994年の入居者である闇金業者の皆さま(あと債務者)が出現。再度ブレーカー入れ直すと、今度は2004年の入居者(?)であるデリヘルの待機室のお姉様達が混入。更にもう一度入れ直すと、2014年に公演中の劇団員まで乱入。大人数になった舞台上で、それぞれの時代にこの部屋で持ち上がっていてた騒動やら話し合いやら公演やらが進行する中、4つの時代の皆様方の間でも奇妙なやりとりが生じる、ってな感じ。

パンフによると、この劇団がホームにしていた歌舞伎町の小劇場が昨年閉鎖となり、追悼の意味も込めて、その小劇場の入居していた雑居ビルをモデルにしたとのこと。実際に、そのビルに小劇場が入る前は風俗店が入居しており、さらに同じビルの別フロアには、闇金か反社か分からないが「おや。。。?」と思うようなオフィスが入居していたとのことで、10年ごとに入居テナントが移り変わるって設定も、入居している面々も、実にリアル。そして、まさに新宿の雑居ビルに入居するシアタートップスで、その公演をうつというのも、ナイス。今自分が座っている場所の空間軸やら時間軸やらが延長されたような、不思議な感覚を味わえました。これは芝居ならでは。

こういった「不適切にもほどがある!」的設定でお約束である、ジェネレーションギャップを扱うネタもてんこ盛り。で、あちらは40年前と現在との間のギャップしか扱わないけれど、この芝居は10年刻みの4つの時代間で生じるギャップを扱うというのも楽しい。「そうそう"youtube"は10年前の人に分かるけれど、20年より前の人には分からないよね」とか。あと、2004年のデリヘル嬢が同僚のSARS感染を心配し、それを見た2014年の劇団員が「大丈夫、そもそもパンデミックなんて起きるはずないですよ。21世紀ですよ!」とのたまい、それを見た2024年の人が、、てなネタも面白かった。芝居のタイトルである「なかなか失われない30年」は、もちろん「失われた30年」が元ネタなのだろうけれど、こうしてみると30年って、とても長いですねぇ。「なかなか」どころか、どうやっても失われないですよ。

日曜日の昼公演に行ってきたのだけど、少々空席があって、大変残念。とても上質な舞台なので、もっと話題になって良いと思う。芝居が終わって新宿の街をブラブラ歩いていると、円安日本を楽しんでいる外国人観光客が日本人以上に目立っていましたが、彼らに日本の小劇場文化を楽しんでもらう術は無いものかしら。


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