見出し画像

「名言との対話」11月4日。上村松篁「鳥の生活を理解しなければ、鳥は描けない 」

上村 松篁(うえむら しょうこう、1902年(明治35年)11月4日-2001年(平成13年)3月11日)は日本画家。享年98。

母は近代美人画の大家・上村松園。父は松園の師の日本画家鈴木松年ともされるが、未婚であった松園は多くを語らなかった。 松園は竹内栖鳳に師事した近代美人画の完成者で、女性初の文化勲章受章者である。上村松篁は松園の嗣子で近代的な造形感覚を取り入れた花鳥画の最高峰で、文化勲章を受章している。松園の美人画花鳥画に置き換えた画風。松篁の息子の日本画家・上村敦之は、2013年、文化功労者となり、今年2022年に文化勲章を受賞した。松園と松篁も文化勲章を受章しており、親子三代での文化勲章受章となった。

敦之は文化勲章受章に際して、「僕は僕、父は父、松園さんは松園さん」と語るが、仏壇に手を合わせた。「もういっぺん命をいただけるのなら、鳥類学者になりたい」という。そして「これまでの画家が描いてきた、すましたタンチョウとは違う生々しいタンチョウを仕上げます」と語っている。(産経新聞

2015年、奈良の近鉄グループの総帥・佐伯勇の自宅は現在では上村松園ら3代の日本画家の松柏美術館になって解放されていて訪問し、3代にわたる上村家の画業を堪能したことがある。この松柏美術館は、絵は上村家、資金は近畿日本鉄道の佐伯勇会長が出した。2022年4月には、三代の作品展が東京富士美術館で開催され堪能している。

村松篁は鳥の写生にこだわった。インド、オーストラリア、東南アジア等を旅行して鳥を観察している。また、アトリエの敷地にも大規模な禽舎(鳥小屋)を設け、1,000羽を超える鳥を飼って生涯にわたって観察を続けていた。精進を重ねた母の影響、そして本人のあくなき探究心、それらが「鳥の生活を理解しなければ、鳥は描けない 」という言葉を生んだことがわかり、その重みに粛然とする。「「少しでも香り高い絵を」と、私はこれまでも願ってきたし、これからもそういう画境を目標に描いていきたいと思う」。

梅原猛は「上村松篁の花鳥画は、鳥の世界に移された一種の美人画である」と興味深い感想を述べている。(「アート・トップ」1978年12月号)

母・上村松園「一途に、努力精進をしている人にのみ、天の啓示は降るのであります」と言い、その息子の松篁は「鳥の生活を理解しなければ、鳥は描けない 」と言う。親の姿勢がそのまま子に伝わっている感じがする。いずれにしても、この三代の画家の家系には今後も注目していきたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?