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陶芸に携る方々の話を聞こう in 伊賀(第5回/全6回) 吉村尚子さん・濱田光紀さん

HIS地方創生チームが地域の皆さまと一緒になって、その土地ならではの魅力を活かし、地域をより元気にする、そんなプロジェクトが始まりました。第一弾の舞台は三重県伊賀市。伊賀焼振興協同組合さま、伊賀焼陶器まつり実行委員会さまと協同し、伊賀の陶芸の魅力を発信いたします。

その一環として、伊賀市で陶芸に携る6組さまにインタビューを行い、HISスタッフが素人目線でコラムを作成してみました。伊賀市に根付いた陶芸文化とそれに関わる人たち、その魅力が皆さまに届きますように。
(インタビュアー:HIS 宮地、田中/日時:2020年12月某日)

伊賀の陶芸といわれたら、土の風合いが色濃く出た無骨な感じの土鍋や大皿などの伊賀焼が思い浮かぶ。今回お話を伺った伊賀出身の吉村(濱田)尚子さんは、白をベースにした器に繊細な絵付けを施す作風の陶芸作家さんだ。同じく伊賀出身のご主人の濱田光紀さんと夫婦で陶芸工房を営んでいる。ちょうどインタビューをした時、尚子さんは窯出しをしていた最中で「こんな作品を作っています」と見せてくださった。
公式のインスタグラムには料理が盛りつけられたお皿やぐい飲みなどがセンス良く並んでおり伊賀焼というより西洋の食器に近い印象がある。

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◾️陶芸を始めるきっかけは学生時代から

もともと絵が好きで、高校では美術部に所属していたという尚子さん。芸術大学では幼いころから身近に感じていた陶芸コースを選択。卒業後は『金沢卯辰山工芸工房』でさらに陶芸を研究しながら、金属・漆・木工など他の伝統工芸を作る人達と一緒にスキルを磨いたそうだ。

金沢は伝統的に絵付けの文化があるが、その時はまだ現在のように絵付けをしてはいなかったという。「金沢から伊賀に帰ってきてから器を作るようになって、そこから絵付けを本格的に始めましたね。」

前述のとおり、尚子さんの作品は白がベースの繊細で可愛らしい作品をつくっている。
「学生時代にやっていたのがそっち(伊賀焼)の路線じゃないので、変えるのもおかしいからそのままの流れでやってる感じで、伊賀焼はやらないけど空気感を感じながら絵付けに活かしてますね。」

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もともと絵が好きだった尚子さんが、大学時代の陶芸を始め、金沢での仲間たちとの経験を通して、伊賀で自分らしい作風を開花させた。
そして、ご主人も尚子さんの影響もあり、いわゆる伊賀焼らしい「焼き締め」ではなく釉薬を使った繊細な作品を作る。夫婦で作り出した作風と呼べるのかも知れない。

◾️出会いは伊賀の町おこし

光紀さんと尚子さんで作品はそれぞれ個々で作成しているとのことだが、風合いが似ていると素人ながらに思ったりする。そんなご夫妻の出会いはというと、ふたりの地元である伊賀の町おこしだという。

「町おこしの一環として伊賀に物産とか食べ物とかの店を作る会社があって、そこで器の提供ができないかと呼ばれて行きました。旦那(光紀さん)の方はその会社に親戚がいて、ちょうど仕事を辞めてた時期で手伝いに来ていました。」

ご主人の光紀さんが陶芸を始めたきっかけは、尚子さんが手伝ってほしいと声をかけたところからである。
光紀さんも陶芸を作る尚子さんに魅せられていったのだろうか。少しずつ自分でも作り始めた。初めて作ったお茶碗は、不格好ながらも自分で作った作品でとても喜んでいたという。

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◾️線の滑らかさを活かした作品づくり

尚子さんの作品は土の風合いを活かした力強さを感じる伊賀焼とは印象が異なる。「伊賀焼という作り方は私のやってきたこととは違うからやらないけど、伊賀の空気感を感じながら絵付けに活かしてますね。」

白をベースとして、その上に繊細な線が引かれた絵付けが施されている。「線を描くのが好きなんですよ。だからなるべく線の滑らかさを活かした絵付けにしたいと思ってます。細かい表現ができるっていうところかな。器の絵の中にある空気感がちょっとでも伝わるように作っていきたいと思ってます。」

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◾️伊賀焼陶器まつりについて

1978年から開催されている伊賀焼陶器まつり。毎年県内外から陶芸愛好家が集まるこのイベントに8年ほど前から陶芸家として参加している。各窯元が特色を出そうとひとつひとつ手作りで作った作品の展示や販売をしている。遊びで来ているというより陶芸に詳しく、好きで買いに来ているお客さんが多いそう。

出品していく中でだんだんお客さんがついてきて、毎回同じ方が来てくれる。「なかなかお客さんと会える機会が少ないので、是非来て実物を見て選んでもらうっていうことをしてもらいたいです。お客さんも楽しいし、選んでもらってるのを見るのも楽しいので。反応でいろいろ考えるきっかけにもなるので。」お客さんの反応で次回作へのヒントを得ることもあるそう。

◾️さいごに

「伊賀はスタイリッシュでもなければ野暮ったくもない、何にもないからこそ静かでいいっていうか。何もないのどかな景色がどこまでも広がって見えたり。」とお話してくださった尚子さん。そんな場所で他のことは考えず、自分がご飯を食べる器を選んでみたいものである。
(文:HIS 鈴木香里)

naomituのWEBサイト:https://naomitu.jimdofree.com/

▼今までのコラムはこちら「陶芸に携わる方々の話を聞こう in 伊賀」

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