ラクスルの決算公告から会社を分析

印刷のシェリングエコノミーサービス「ラクスル」を運営している、ラクスル株式会社の第7期と第8期の決算公告を見てみましょう。

第7期(2015年8月から2016年7月)の決算公告

損益計算書は以下の数値になっています。
売上高が50億
売上総利益が9億
営業利益が△14億

貸借対照表は以下の数値になっています。
総資産が35億
資本金と資本剰余金合計が58億
利益剰余金が△36億

第7期までは資本金が1億円超でしたが、資本金を減少させて資本金を1億円にしています。

売上高に50億円に対して、売上原価を差し引いた売上総利益が9億になっていますが、やはり原価率が高いですね。販管費が23億円かかっているため営業利益が△14億円になっており、人件費などの運営費がかなり掛かっていることが分かります。

第8期(2016年8月から2017年7月)の決算公告

第8期は資本金が1億円になったために、損益計算書を決算公告する義務がなくなったため、貸借対照表のみの決算公告になっています。

第7期の決算では、資本金が2,920,556千円、資本準備金が2,897,672千円でしたが、2016年8月の20.5億円の資金調達で、資本金と資本準備金がそれぞれ10.25億円ずつ増加しています。

増加後の資本金は3,945,556千円であり、資本金3,845,556千円を減少させています。その減少させた資本金を欠損填補として、第7期決算の利益剰余金の△3,685,479千円と相殺して利益剰余金をゼロにしています。残りの160,076千円を、その他資本剰余金としています。

上記の欠損填補により第7期の利益剰余金はゼロになっているため、第8期の利益剰余金△1,175,411千円が、そのまま第8期の当期純利益という事になります。第8期も10億円を超える赤字ですね。損益計算書を開示していないために売上や営業利益は分かりませんが、第7期の損益状況と構造的には変化はないと想定されるため、厳しい決算となっています。

資本金を1億円にするメリットは大きく、思いついただけでも以下のものがあります。

・法人事業税の外形標準課税の対象外
・年800万円以下の所得は法人税率が18%
・年600万円までの交際費は損金算入できる


印刷のシェリングエコノミーサービス「ラクスル」

ここからは、会社の歴史を見ていきます。

2009年9月に「印刷の新しい発注の仕組み作り」を目指して会社が設立されて、2010年4月に印刷通販の価格比較サービスサイト「印刷比較.com」の運営が開始されます。以前は良くあるようなポータルサイトを運営されていたのですね。2010年9月に「印刷比較.com」から「raksul」に名称変更されて、2010年12月には累計PV数が100万PVを突破します。

ポータルサイトから、印刷のEコマース事業に進出していきます。中小企業では印刷機を持つことはコスト的な負担になるため、日本各地の印刷会社をネットワークし、各社の非稼働時間を活用することで、印刷機を持っていない企業を支援する事業です。印刷機を持っている印刷会社と、印刷機を持っていない企業を繋げることで、印刷のシェアリングエコノミーを実現しています。印刷機の非稼働時間で印刷することにより、高品質な印刷物が安価で提供することが出来ています。

現在では、印刷物をインターネットで注文出来るだけではなく、オンラインデザインサービスとして無料で様々な業種に対応したテンプレートが用意されており、オンライン上で印刷物を簡単に制作することが出来ます。また、集客支援サービスとして、新聞折込チラシ、ポスティング、ダイレクトメールのサービスも提供しています。

運送のシェアリングエコノミーサービス「ハコベル」

2015年12月には、物流サービス事業「ハコベル -hacobell-」の運営が開始されます。ハコベルはラクスルとは違い、印刷ではなく運送のシェアリングエコノミーサービスです。ハコベルは、インターネットから荷物の配送予約ができるサービスで、運送会社の非稼働時間で配送することにより、高品質かつ安価に配送が出来る仕組みを提供しています。

お客さんと運送会社をオンラインで直接繋げることで無駄を省いており、最適なドライバーとすぐにマッチング出来て、中間コストがカットされるため、安価な料金での配送を提供しています。


ラクスルの過去の資金調達

ラクスルはこれまでに80億円弱の資金調達を実施していますが、資金調達を振り替えってみます。

2012年4月にニッセイ・キャピタルから1.1億円を資金調達。https://corp.raksul.com/news/press/120417_allocation/

2012年11月に、ヤフー株式会社の投資子会社であるYJキャピタル株式会社、投資ファンドであるANRIから1.2億円を資金調達。https://corp.raksul.com/news/press/121126_allocation/

2014年2月に、WiLをリードインベスターとして、グローバル・ブレイン、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、プラス、GMOベンチャーパートナーズ、ミクシィを引受先とする合計6社から、総額14.5億円を資金調達。https://corp.raksul.com/news/press/140206_allocation/

2015年2月に、既存株主であるオプト、グローバル・ブレイン、WiL、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ANRI、電通デジタル・ホールディングス、GMO VenturePartnersに加え、新たにリンクアンドモチベーション、グリーベンチャーズ、Global Catalyst Partners Japanから、総額40億円を資金調達。https://corp.raksul.com/news/press/150217_allocation/

2016年8月に、株式会社日本政策投資銀行、フィデリティ投信が運用する複数のファンド及び既存株主である株式会社オプトホールディング、グローバル・ブレイン、GMO VenturePartners、Global Catalyst Partners Japanから、総額20.5億円を資金調達。
https://corp.raksul.com/news/press/160804_seriesd/



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