映画:カサブランカ
言わずと知れた名画だ。
一度、DVDで観たことはあったのだけれども、昨日、渋谷の映画館で上映されたので観に行った。
小さなシアターで、感染症対策で客席を半分に抑えているとは言え、満員だったのには、ちょっと驚いた。
やっぱり、映画は映画館で観たいと思う人は多いのだろう。
それは、大画面の魅力なのか、不特定多数の人と共に観る連帯感なのか、それとも、予め決められた場所、決められた時間にしか観られないという不自由さにこそ、実は大きな意味があるのかも知れない。
往時を懐かしむ世代が多く押し寄せている印象でもなかったので、尚更に、この時代に、パブリックドメイン作品を映画館で観るという行為には、映画の映画たる醍醐味がありそうだ。
字幕も、戦後間もない頃に、放映された時のものなのか、かなり古いものがそのまま使用されており、訳出されない会話が多くあったり、出るタイミングがずれていたりと、親切丁寧なものでなかったのが、却って、程よい緊張感を生んでいて、映画の雰囲気にも合致していたと思う。
前に、レンタルして観た時には、戦時中のラブロマンス映画くらいにしか思わなかったけれども、改めて見てみると、全くのプロパガンダ映画であるし、リックはいよいよ格好いいし、ルノー署長の設定が如何にも雑なのに魅力的な事が意外でもあった。
初めて、この映画を観た気分だった。
戦時中に、リアルタイムで観たアメリカ人の感慨がどんなものであったのかは、正直、想像するのも難しかったし、敗戦後直ぐに、この映画を受け入れた日本人の心境も、とても単純にも見えるし複雑な気もしたが、確かな事は、covid-19の流行でオリンピックが延期になった年の8月15日に、わざわざ映画館まで観に出掛ける心理と言えば、ただただ名画が観たいというだけの、どうにも情けないものである。
別段、リアリティのある映画ではないのだろうし、筋書きは時に強引だ。
それを全て飲み干してしまう雰囲気こそは、映画が映画たる醍醐味とすら思えて来る。
リックを取り巻く人々が、皆、魅力的なキャラクターを背負って描かれていて、観ていてとても気分がよい。
だからこそ、切ない恋はいよいよ際立つ筈なのに、それをからっとはねのけて、ドラマは閉じられる。
反則だよね、こんなにもセンチメンタルのないラブロマンスのかっこよさは。
カサブランカは、表立ってはプロパガンダ映画ではない。
それは、結局、如何なるメッセージよりも、ストーリーが勝っていて、キャラクターがストーリーを喰っているからだと思う。
最後、リックとルノーが並んで歩いて行く場面。
あれほど、滅茶苦茶な事もあるまいに、と思いつつも、全て納得させられてしまうのは、映画が虚構であるからに他ならない。
そういう画の強さとは一体何処からくるものなのか知ら?
結局、ハンフリー・ボガートが格好いいと言うに尽きるのかな。
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