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因縁のある部屋 2

因縁のある部屋2

咳が聞こえなくなってからのお隣は静かなもので、暫く誰も引っ越して来ず、静かな日は続きました。
 
(私自体の生活は静かなものではありませんが、それは後に書くことに致します)

一ヶ月程たったある日、母子家庭の親子が引っ越して来ました。
母1人子1人。
家賃も安かったんだと思います。

普通に暮らしていたようですが、一ヶ月ほど経つと何故か引っ越して行きました。
特に付き合いも無かったので、団地の抽選でも当たったのかななどと考える程度でした。

次に入居してきたのも母子家庭で、子供が3人、小学生と中学生がいる4人家族でした。

私の母親ともたまに交流していて、何事も無く暮らしていました。

二ヶ月ほど経ったそんなある日。

お隣さんが急に引っ越して行きました。
母親に
「え? もうお隣引っ越しちゃうの? なんで?」

とたずねると、母親もお隣さんに理由を聞いたらしいのですが。
「なんだかわかんないけど、ハッキリ理由は言わずに引っ越してったんだよね」
と答えが返って来ました。

その後、2~3組引っ越して来ましたが、一ヶ月経たずに皆引っ越して行きました。

そんなある日、大家だと言う老夫婦が2人でやって来て、その家を改築して住む事になりました。

暫くすると中はすっかりリフォームされ、今まであった建物の全面にもう一つ部屋を増築し、今まであった古い私の家の隣に、綺麗に改築された家がくっついている~ という見た目が変な家が出来上がりました。

大家さん達がそこで暮らし始め、暫くすると白のスピッツを飼い始め、犬ではあるけれど猫っ可愛がりをしている二人の姿をたまに見かけました。

大家さんが犬を飼い始めた頃に私は家を出ていましたので、その後の詳しい話は母親から聞いた話になります。

暫くすると、隣のお婆さんが癌になり入院した、という話を聞きました。
数ヶ月入院生活が続い後、お婆さんは亡くなり、お爺さんは完全に一人暮らしになってしまいました。

母親の話によると
「午前中には自転車に乗ってパチンコとかに行って案外自由に暮らしてるみたいよ」
とのことでした。

そこから1~2年ほど経ったある日、鼻息を荒くした母親から電話が来ました。
第一声
「隣のお爺さん死んでた!」

詳しく聞くと。
「電話がかかってきたんだけど、大家さんの保険屋さんだったのよ! で、何の話かと思ったら、大家さんに電話しても繋がらないので、申し訳ないけどちょっと様子を見に行ってくれませんか?って話しだったのよ」

母親は嫌な予感がしつつも、隣の様子を見に行くと
いつもお爺さんが乗り回している自転車がないので出掛けているだけかもしれないなと思ったそうです。

家の鍵は閉まっていて、縁側に回り込むとカーテンが少しだけ開いていて、中を覗くと障子が20㎝程開いていたのだそうです。
その隙間を凝視すると足が見えました、横になっているだろう足だったそうです。

少し寒い時期だったので、布団を被って寝ていないとおかしい、これは一大事かもしれない、声掛けなどもして、これは警察に電話ををした方がいいだろうか? と父親に連絡をとり通報という流れになったそうです。

お巡りさんが到着し、鍵を壊そうかと相談していると、縁側の上にあった細長い小窓の鍵が開いているのを見つけ、そこから細いお巡りさんが入って確認したのだそうです。

お爺さんは亡くなっていました。

その後、聞き取りが始まり。
「隣のお爺さんを最後に見かけたのはいつですか?」
等と聞かれたそうです。

知ってる限りの事は全て話したそうです。
暫く見かけてはいなかったそうですが、前の晩に室内の明かりは消してテレビだけを点けているらしき明かりは外に漏れていた、とか。
ここ数日、隣からのテレビの音らしきものが聞こえていた、とか。

父親の話によれば、テレビの光らしきものを見たのは一回ではなく、物音も聴こえて居たのだそうです。
そのくらい、隣との壁は薄かったのです。

すると「おかしいですね~…」 という返答が返って来ました。
何がおかしいのか聞くと

「いや… どう見ても、死後一週間は経っています」
と言われたのだそうです。

死因については、当たり障りのない心筋梗塞か何かだったと思います。

その後、隣から物音が聴こえる、などという情報は私には入って来ませんでしたが
その後何度か、お隣に入居者があったらしいのですが、全て1~2ヶ月で出て行ってしまっていたそうです。

もしかすると、素行の悪い親父のせいではないかと思わないではありませんでしたが、何せ壁が薄いので、五月蠅いとかそんな理由も考えられますが

その後に引っ越して来たMちゃんによって、やはり何かしらこの家にはあるんでは無いかと、思い至りました。

そして、これを書くに当り、久々にMちゃんに連絡をとってみようと思いました。
家は知っています、お婿さんをもらったので今でも当時に建て直した家に住んでいました。

久々の訪問に面食らったようですが、昔のように怪訝そうな顔で対応してくれました。

あの時の家の話を聞くと
なぜ、その様なことを聞きに来たか詰問され…。
…。 
ぷんすかされました…。

で、話を聞くと確かに私の家からの音は五月蠅かったと言われました。
やはりな~ とは思いましたが…。

その家に引っ越してからと言うもの、兎に角落ち着かないのだそうです。
犬もその通りで、力一杯暴れ回って手が付けられなかったと。
そのうちに人の気配がするようになり、自分一人の時でも背後に気配を感じたりするようになったとの事でした。

ただMちゃん、実は看護師さん。
肝は座っているようで、家族とも「家を建て替える間だけだ」と気にしないように過ごしのだそうです。

これでMちゃんに対する長年の謎は解けました。

その家は、長期にわたり住む人を居着かせない家だったのですが、最初のお爺さんはラップ音を残して気配を消したはずなのに、実はまだそこに住んでいたのかも とか。
更に2回目に亡くなった大家のお爺さんも追加されて、更に犬好きの所に犬が来たので、実は犬はその見えないお爺さんに構われすぎてパニックになっていたのではなかろうか?
等という考察も生まれますが、実のところハッキリした答えは出ていません。

久しぶりにその場所を見に行きました。
何年か前にその建物は全て取り壊され、今時の小ぎれいなアパートが建っていたのは知っていましたが。
近くに行く度に見に行っていました

ただそこのアパート、何時行っても一部屋しか埋まっていないんですよね…。