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黒歴史君の話

ある夜、友人3人と飲んでいました。
 私達はボックス席に座ってあれやこれや楽しくおしゃべりをしていました。

 店内はそこそこ広く、ウエスタン調の薄暗い雰囲気で、目の前には長いカウンターがありました。

 しばらくすると、カップルが入って来て目の前のカウンターに座りました。

 女性は厳ついスーツを着て、髪型はXファイルのスカリー風。
 男はと言うと、痩せ型のスラッと背が高い、しかしダサいシルエットのサイドベンツの安っぽいスーツ。
髪型は少しウエーブが掛かった毛量が薄めの……・。

 あれ? どこかで見た事がある。
 と思っていると、友達が小声で。

「ちょっと! あの人○○君じゃないの?」
 と、言います。

 ……。

「うわぁ💦 本当だ、ヤバっ、スカリー連れてるじゃんWWW」
  と私。

 すると友達
「シッ🤫 ちょっと声が大きい」とドラマのような注意をされました

 ○○君、それは、以前に書いた、ゴミ箱の黒歴史の彼です。
 昔はあんなに格好良くて、ファッション雑誌のモデルにソックリなイケメンだったのに。
 痩せて高身長は健在でしたが、昔はファッションも気にして格好良かったのに、なんでこんなに田舎くさくなっちゃったんだろうって思っていました。

 友達はその(以降黒歴史君とします)との色々を知っているので特に私の暴言になんのお咎めもないのですが。
 いや、黒歴史君の女の連れには巻き込み暴言(スカリー)をしてしまい申し訳ないな、とは思っています。

 その黒歴史君が、目の前のカウンターに女と座っている訳ですから、目に入らない訳がないのです。

 以降3人で、そのバブルカップルの様な2人を観察しながらまったりと飲んでいました。

 すると、入店した時から、黒歴史君カップルは、既にしたたかに酔っていたようで、カウンターで人目もはばからず、ぶっちゅぶっちゅし始めました。
肩をグイグイ引き寄せて

 一杯飲んじゃぁ~ぶちゅぶちゅ

 二杯飲んじゃぁ~ぶちゅぶちゅ

 3人でそれを観察しながら。
「うわぁ~やるね~」なんてニヤニヤしながら飲んでいました。

 私はと言うと、その黒歴史君とは三年付き合いましたが、飲んでいるその時点では何の感情もなく
「無」
の存在になっていたので目の前でぶっちゅぶっちゅされていても完全に他人事でした。

 そんなこんなで暫くすると黒歴史君は、流石に(性欲より)尿意に勝てなかったらしく、トイレに立ちました。

 私達はサッと黒歴史君から目をそらしましたが、目の端には見えています。

 黒歴史君は私達3人と面識があるので、めいめいで
「そっちは見ていませんよ〜」
的な素知らぬ素振りで。酒を飲んだりして知らんぷりを決め込みました。
 ですが目の端は見えるので何となく見ていると。
 黒歴史君はカウンターの椅子を立ち上がるとくるりとこちらを向き歩き始めたのですが、私達の前に来た時に、ピタッと動きを止めるのが見えました。

 あぁ、やっぱ気づいちゃったか〜と思っていました。

 ピタッと動きを止めた後、ソソクサとトイレに入り、その後トイレから出た後は一切こちらを見ずに、さーっとカウンターに座りました。

面白い事に、ちょっと前までぶちゅぶちゅしていたぶちゅぶちゅモンスターはそれっきり鳴りを潜めたようでした。

 実はその黒歴史君に私は振られているのです。

 振られた頃、私も、あちらの家庭環境的な事で段々としんどくなって来たのもあり、渡りに船とばかりにさっさと別れてしまいました。
 別れた後は、日々友達と楽しく遊んでいたのですが、ある日、友達とボーリングをしていると、隣のレーンに別れた黒歴史君も友達とやって来ました。
 偶然だとは思いますが。

 で、暫く振りに見る私がやたら可愛く見えたらしく(昔は可愛かった)
その後復縁を迫られ、見事にストーカー化し、黒歴史君に2回殺され掛けました。

 と、その話また後で・・・。