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ホテルの隣の部屋(怪談)

 私は仕事で全国あちこちに行きます。
 これは、関西方面に一週間ほど滞在した時のお話です。
 
 その日チェックインは4時頃だったと思います。
 普通に部屋に入り、荷ほどきなどして、夕食に出掛けました。
 返って来て何やかんやして就寝するのですが。
 夜にふと目を覚ましました、フットライトだけの暗い部屋が、ざわざわと落ち着かない雰囲気になっています。

 寝付くまでは何も感じませんでした。
 なんとなく感が強いので、部屋に入ったときに変な部屋だな~という部屋もありますが、ここはチェックインした時は何も感じませんでした。
 ざわざわと人が動き回っているような…… 
 気のせいか、黒い影がウロウロしているようにも見えます。
 自分1人だけなら少し怖いのですが、その時は同室の人もいましたし、電気を点けるのも悪いなと思ったのでそのまま我慢しました。
 
 兎に角不思議でした、こんなに途中から部屋の空気が変わるなんて、今まで体験した事がありませんでした。

 次の日の朝も若干空気が変ではりました。
 なんやかんやで仕事に出発したわけですが、同室の人はその手の心霊現象を常に否定している人なので、私は(わざと)どうしても話しておきたくて話すのですが、それを聞いても然程気にしている様子は有りませんでした。

 その日仕事が終わり、ホテルに帰り宿泊階の廊下を歩いていると、とても良い香りが漂ってきました。
 嗅いだことのない、とても良い香りでした。
 すると同室の人が
「この部屋から凄い線香の臭いする!」
 と、自分達が泊まっている部屋の隣の部屋の事を言っています。
 私はあるときから煙の臭いがダメになっていて、線香も蚊取り線香もダメで。でも。
「あ! この線香なら欲しいな~」 
 と呑気に思っていましたが同室の人は顔をゆがめています。
 
 夕方なのに、その部屋のドアには
「掃除は結構です」 のマグネットが貼られていました。

『もしかして夜に突然部屋の雰囲気が変わったのって、隣で誰かが亡くなったのかも』

 と、気付きました。
 
 その次の日も丸一日隣のマグネットは貼りっぱなしでたが、そのまた次の日からはそのマグネットは取られて普通にお客さんが入っていました。
 
 因みに、線香の香りがしてからチェックアウトするまで何も不思議な現象はありませんでした。