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偏って愛することを、偏愛、と言います。
偏らずに愛することは、博愛

「これ『が』好き(嫌い)」は偏愛。
「これも好き」「全部好き」が、博愛です。

本記事では、偏愛と博愛と社会との折り合い、
そこを探ってみましょう。

まずは「食べ物」の話から。

食べ物の好き嫌いは、ほとんどの人が
持っていますよね。

「特に、これが大好きです!」
「これは、ちょっと苦手です…」

精神的なもの、肉体的なアレルギーなど、
理由はあるとは思いますが、
食べ物には「偏愛」が起きやすい
(もちろん、何でも美味しく食べます、
という「博愛主義」の人もいますが)。

人間には「五感」があります。
食べ物は、特に味覚により左右しますが、
視覚、嗅覚、聴覚、触覚も、この
「好き嫌い」に大きく影響を及ぼします。

「カクテルの色合いが綺麗!」
「うなぎの匂いに惹かれます」
「せんべいバリバリいきます」
「納豆のネバネバ感がちょっと…」


など、私たちは必ずしも
味覚「だけ」で判断してはいない。

…では、人に対しては?

「特に、こういう人が大好きなんです!」
「こういう人は、ちょっと苦手です…」


食べ物と同じく、博愛主義の人もいる
とは思いますが、偏愛の人もまた多い。

「この人の服の色合いはいつも綺麗!」
「香水? 蠱惑的な香りに惹かれます」
「あの人のイケボは、耳に心地よい」
「話すときのネチネチ感がちょっと…」


など、人に対して「味覚」は
そんなに関係ないかもしれませんが、
五感によって左右されることも多い、のです。

手始めに「食べ物」「人」の
偏愛と博愛を述べてみました。

ここまでで、読者の皆様はいかがですか?
偏愛ですか、それとも博愛ですか?


…思い浮かんだイメージをそのまま、
次の話題に移ります。
今度は「趣味」について!

趣味もまた千差万別、複雑多岐。
「ご趣味は何ですか?」という質問が
お見合いで定番になっているように、
人は「仕事」だけでなく「趣味」にも
カラーがあらわれるもの。

それゆえに、好き嫌いが生じやすい。
「食い違い」もまた、起こりやすい。

男性「趣味は、読書です」
女性「(…ええと、私は本は
あまり読まないんだけど)」
男性「あなたは、どんな本を読まれるんですか?」
女性「(…漫画しか読んだことないよ~)
れ、恋愛に関する本を、多少たしなみます」
男性「おお!ツルゲーネフの『はつ恋』など?
いやあ、私もよく読みました!」
女性「(ツ、ツルゲー、無理ゲー、それ、誰?)
そ、そうそう、私も夢中で読みましたわ…」

…こんな風に、お見合いでしたら
その場の雰囲気を壊さないよう
うまく話を合わせるかもしれません。

食い違い、すれ違い、理解不能…。
そういうこともよく起こりがちですよね。

ここで一つ、質問。
このケースの場合、なぜ男性は
ツルゲーネフの『はつ恋』を提示したのか?
なぜ女性は「漫画」のことを
言い淀んでしまったのか?

設定や前後関係をすっ飛ばしているので
さまざまな想像ができるとは思いますが、

ここで言いたいのは、
「高らかにおおっぴらに公開できる」趣味と
「密やかに公開せずに楽しんでいる」趣味
とがある
、ということ。

もちろん、絶対的なものではない。
趣味「自体」に「絶対に公開できないもの」
「必ず公開するもの」と属性があるわけではない。
本人の問題です。

しかしながら、公開しやすい趣味、
公開しにくい趣味、というものは、ある。
特に「誰に対して明らかにするか」は大事。

先ほどのお見合いのケースを
勝手に解釈してみますと

女性は男性の「趣味は読書です」に対して、
自分はあまり読まない、と引け目を感じます。
男性の「何を読みますか?」の質問には、
自分は漫画を読むんだけど、と思いつつ
それを「隠して」『恋愛に関するもの』と
ぼかして答えています。

それに対して男性、ロシアの文豪、
ツルゲーネフの小説「はつ恋」を提示。
男性にとっては、この提示は
まったく世の中に恥じることがない。

女性はおおいにとまどいますが
(たぶん女性は読んでいませんが)
私も読みました、と話を合わせています。

…私が即興で書いた断片的な会話です。
解釈は人それぞれ。

もしかしたら
「高級料亭」での話かもしれないし、
「文学カフェ」での話かもしれない。
男性が旧華族の「いいところのお坊ちゃん」で
女性は「玉の輿」を狙っているかもしれません。

ただ、繰り返しになりますが、言いたいのは、
「公言しやすい趣味」「公言しにくい趣味」が
あるよ
、ということです。

その違いは、どこから?

公言しやすいものは
「ある程度世の中に受け入れられているもの」
が多いですよね。逆に、公言しにくいものは
「世の中に賛否両論ある、嫌いな人も多い」
というものが多い。

食べ物の例に戻ってみますと、

「納豆が苦手です」と言えば、
(特に関西方面の人を中心に)
納得する人が多いかもしれません。しかし
「カレーが苦手です」と言えば、
「なんで?」と思いますよね。

それは、納豆が苦手な人がいる、
ということがよく知られているのに対し、
カレーが苦手な人はあまり聞かない、
ということによるから。

もちろん掘り下げれば
「辛いものが全般に嫌い、
そんなに辛くないカレーなら好き」
かもしれませんし、
「昔、カレーが好き過ぎて食べ過ぎて
いまは受け付けない」かもしれません。
「カレー屋さんの店長と付き合っていたけど
ひどい別れ方をしてカレーが嫌いになった」
かもしれないにもかかわらず、です。

世間の目。常識。公序良俗。
ひっくるめて言えば「社会との折り合い」。
さらに言えば「個々人の深い事情」。


そういうものをこきまぜた上で、
自分の「好き」をどこまで、
いかに「見せる化」するか?


言い換えれば
どこまで「好き」を掘り下げるのか。
どこまで、社会と折り合いをつけるか。


そういうことを、意識的に
行うべき時代なのかなと思います。

まとめます。

本記事では「食べ物」「人」「趣味」から
偏愛、博愛、社会との折り合いについて
テーマを提起してみました。

あえて「仕事」「職場」については
書いていません。

しかし、ここまで読まれた読者の方は、
すでにご自分の「仕事」「職場」に対し、

好き嫌い、偏愛、博愛はどうなのか、
どう社会と折り合いをつけているのか、
と、考え始めているのではないでしょうか。

いまの仕事や職場は、好き、ですか?

五感的にはどうか?
「少々、たしなみます」のように
自分を隠し、相手に合わせて
無理に繕ってはいませんか?

これからはますます、自分の好き、
周囲の人の好き、そういうものを
いかに見せていくか
(逆にあえて見せないか)が大事です。

SNSをうまく活用すれば、
全世界に発信することだってできる。
特定の人だけに、非公開で発信もできる。

たとえそれが「偏愛」であっても
ジグソーパズルの凸凹が組み合うように
世界のどこかに共感してくれる人がいる、
かもしれません
。意外と。

あなたの「好き」は、何ですか?

※このあたりの話題が好きな方は、
よしながふみさんの漫画『愛すべき娘たち』
ぜひお読みください!!↓

※なお、私の「好き」についてはこちらを。

『好きの「見せる化」~オタクの60年史より~』

『ワークライフジグソーの変遷(いなお編)』

合わせてぜひどうぞ!

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