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あることが当たり前と思っているものほど、
無くなってみると
その大事さがわかる
、と言います。

電気や電力は、その最たるものですよね。
あって当たり前なもの。ゆえに、
停電になって、失って、初めて
その大事さが身に沁みるものです。

本記事では、
その「電力の安定供給」に尽力した、
二人の人物を紹介していきます。
…いわば「電気の伝記」です。

一人目は、日本から。
『松永安左エ門』(1875~1971)です。

明治8年、長崎県は壱岐島の生まれ。
明治22年、慶應義塾に入学。
明治31年、日本銀行を
一年足らずで退社後、電気事業に参入。
大正11年、東邦電力を組織。
東電と熾烈な競争を繰り広げて、
「電力の帝王」とも呼ばれました。

戦後の昭和24年、
電力復興の責任者に抜擢され、
昭和26年に電力九社体制を発足。
なお、これに沖縄電力を加えた
電力十社体制が今日まで続いています。

その後、電力中央研究所を設立し、
以後、電力界の発展に尽くしました。
昭和46年に死去、享年96。

明治~大正~昭和を
生き抜いた96年の生涯!

戦後にはすでに高齢でしたが、
電力復興の責任者に抜擢されて、
文字通り「死ぬまで」活躍しました。
松下幸之助や池田勇人といった、
経済界・政界の大物からも
敬意を持たれていた、と言います。

そんな彼の生涯を見ていくと、
「官僚嫌い」「民間で活動」
という思想と行動が浮かび上がります。

おそらく福沢諭吉の
「学問のすゝめ」に感銘を受けて、
慶應義塾に入った影響があるのでしょう。

「独立自尊」
福沢諭吉の主張の本分です。

一身で独立せず、一身を自尊せず、
「大組織の一員」となって働く官僚たちは
彼の目から見れば、全く相入れない。
「官僚は人間のクズだ!」とまで放言し、
命を狙われたこともあったそうです。
(戦前の日本は国家権力が非常に強かった。
その権力を背景に働く官僚たちを
クズよばわりしては、そりゃ危険ですよね…)

そんな彼なのですが、
なぜか総理大臣を務めた
池田勇人とはウマが合いました。

池田勇人、元官僚です。

池田は大蔵省の事務次官まで務めた
いわば「官僚の中の官僚」だったのですが、
放言で大臣を罷免されるなど
「ソツがある」「官僚らしくない」
豪傑肌の政治家
でもありましたので、
お互いに波長が合ったのでしょう。

安左エ門さんは、池田総理が旗を振る
「所得倍増計画」のための
政策に協力していきます。
彼の電力が、どれほどこの計画のために
役立ったことか…!

いまの私たちが
電力の恩恵をおおいに受けられているのは、
この松永安左エ門さんの
尽力のたまものである、
と言ってもよいのではないでしょうか?

さて、二人目は世界から。
『ニコラ・テスラ』(1856~1943)です。

…テスラって誰?と思った方も、
エジソンの名前はご存知でしょう。

「発明王」エジソン!
電気の実用化も手がけた人。
エジソンは偉い人なんだ!と、
アニメの『ちびまる子ちゃん』の
「踊るポンポコリン」でも歌われますよね。

ニコラ・テスラは、
その偉い偉いエジソンにケンカを売り、
特に電力の分野では、
エジソン以上の功績を残した人なのです。

エジソンとは「電流戦争」で争っています。

◆「直流」にこだわるエジソン!
◆「交流」を主張したテスラ!

エジソンはネガティブ・キャンペーンを展開、
テスラの使う「交流」を使って
わざと動物を感電死させたりして
交流の危険さをアピールしたほどです。
(エジソンは、敵に回すと危険な男です)

…ですが、現在の世界で
圧倒的に多く使われているのは
テスラの「交流」。
そう、テスラは、あのエジソンに勝っている。

そんな恐ろしいほどの実力を持つ
ニコラ・テスラだったのですが、

鳩をこよなく愛し、
鳩にエサをやりに行って
車に轢かれて重傷を負ったり、

ホテルで鳩にエサをやり過ぎて
鳩が居着いてしまい、
ホテルを追い出されたりと、

ちょっと怪しい行動もしています。
天才とは常人の尺度では測れないもの。

当時のアメリカでは
マッドサイエンティスト扱いされ、
あの『スーパーマン』の
敵役になったりもしています。
(それはそれですごいことですが)

…ただいずれにしても、現在の世界で
電力の恩恵を得ることができるのは、

エジソンにケンカを売ってまで
「交流の電流」を広めた
このテスラさんのおかげ、
と言ってもいいのではないでしょうか?

最後に、まとめます。

本記事は、電力の安定供給に尽力した、
「松永安左エ門」と
「ニコラ・テスラ」について書きました。

池田勇人は知っていても、
松永安左エ門は、知らなかった。
エジソンは知っていても、
ニコラ・テスラは、知らなかった。

そういう読者の方もいると思います。
私も、そうでした。

有名人の陰には、
実は凄い人がたくさんいるのです。

大成功を収めた人の陰には、
知られざる天才や努力家がいるもの。

…しかし、ですね。

よくよく考えてみると、彼らのように
「世界的な有名人ではないものの
世界に通用するような力を持っている」人
は、
この現在の世界にも、私が知らないだけで
たくさんいるのでないでしょうか。

例えば、停電の際、
電力の供給を復活させようと、
徹夜で必死に尽力されている方は、
ほとんどが「無名」の技術者でしょう。

ですが、いったん失われた電力を
数日間で復旧させる、ということは、
考えてみれば、とても凄いことではないか?
たとえ今は一身が独立自尊していない
無名の「組織の駒」であったとしても…。

いや、停電の時だけでは、ありません。

今こうして、
パソコンで私が記事を書いている時も、

たくさんの電力技術者、
インフラ整備者の方が、
スポットライトを浴びている人の陰で
電力の安定供給のために
黙々と働いているのだ
、と思います。

私たちのインフラは、
実は、このような方たちの
「無名の努力」によって成り立っている。
失って初めて、それに気づく…。
しかし、失う前にも、
そういう方たちを想像することは必要。

そんなことを考えながら、
本記事を書いてみました。

…読者の皆様は、いかがでしょう?
電気があるのは当たり前、
と思っていませんか?
有名な人の陰に隠れている
無名の人たちを忘れてはいませんか?

黙々とインフラ整備をする人たちのことを、
折に触れて想像してみませんか?

本記事は以前に書いた記事を
リライトしたものです↓
『電力の安定供給のために ~鬼と鳩~』

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